第82話判定
「本当は当たる直前で、停止させる予定でしたわ」
俺の妹は、サーシャを認めるようだ。
「では、戻しましょう」
再び鉄球が空をかける。
桜子が手にしている、鉄の棒へ戻っていった。
「手加減したとはいえ、結構本気でしたわ。お姉さまをなめていたようです」
「その鉄球、すごいなあ」
俺の妹が、こんなにゴツイ武器を使うはずがないと思わされた。
「<タケミカヅチ>専用装備、<フツミタマ>ですわ」
マイシスターは微笑んでいう。
そう言う名前の鈍器か。
「魔法については教えてもらえないのか? 驚異的な移動スピードだった」
「それは俺も気になった」
日本政府の偉い人から、ほかの専用機持ちのことを聞かされた俺。
だが、得意魔法までは詳しく教えてもらえていない。
魔女の一門は閉鎖的。
基本的に、部外者に魔法を教授することはない。
血縁を大事にするコミュニティである。
だから、敵国になるかもしれない外部の人間に、魔法のからくりを教えはしないだろう。
そう思ったのだが。
「あの移動方法は、磁力魔法を用いたのですわ」
「なるほど、金属の塊であるAAが、その方向に引き寄せられたわけか」
鉄球のことも納得できる。
「その解釈でおおむね間違っていません。お兄様と再会した時も、そうやって飛んでいきました」
「あの時ね」
いきなり巫女服の幼女が、俺の胸に飛び込んできたと思ったが、あれも魔法によるものだったのか。
「だから、気持ちが昂ると電気が漏れちゃうのか」
「お恥ずかしい話です」
「私にそのことを教えていいのか?」
「はい、かまいませんわ」
「他国の軍人だぞ」
「あと、ボクも聞いてるよ」
やり取りには全然入ってこないが、一応オリヴィアもこの場にいる。
「でも、わたくしのお姉さまです。黙っていても、お兄様から伝わるでしょうし」
「確かにな」
俺は秘密を知ったら、いざという時は誰が止めようが教える。
「秘密にすることに意味がないわけです」
「しかし、これはどう判定するんだ?」
勝負は途中で止まったようなものであるし。
「攻撃を受けて終わったから、サーシャの負け?」
姉が義妹に勝てなかったのか?
「違いますわ、お兄様。負けたのはわたくしです」
「まあ、ハンデもあるしな」
サーシャにとって有利なバトルフィールドを用意したとはいえ、
機体の性能や訓練のことなどもある。
桜子が大変有利な条件だ。
「それもありますが、違います」
「じゃあ何?」
「お兄様にまとわりつく銀バエは、頭の栄養が胸部にまわっているだけの、無能クズぐらいに思っていました。わたくしの<フツミタマ>をそらせるぐらいの力があれば、合格点をあげてもかまいません」
「お前は……」
可憐で清楚な外見と裏腹に、口からはキタナイ言葉がすらすらと出てくる。
「予想以上に優秀であったので、それを理解できていなかったわたくしの負けです」
「そう言ってくれるのはうれしいが、どうしてこんなことをしたのだ?」
サーシャは不機嫌そうに言う。
顔に怒りが出ていた。
「お兄様のためですわ。無能クズにお兄様を任せることはできないのです」
「それだけか?」
「……」
桜子が黙った。
サーシャから目線をそっらしているようにも見える。
「最初からおかしいと思っていたのだ。お前以外の一族が、誰も出迎えてくれないからな」
「そうなると……」
「ああ、何か裏があるのだろう」
「俺たちが呼ばれたことと何か関係が?」
「私はそう考えている」
いきなりすぎる話だからな。
他国の専用機もちが2人(と俺)が受け入れられちゃうし。
「ボクは義姉として受け入れられていたけど、それは騙されていたってことなの?」
オリヴィアも驚く。
「黙ってないで何か言え。妹が姉に逆らうのか?」
「義姉になっちゃっていいのか?」
サーシャは、それを否定していたと思ったが。
「それについては、私からお話ししよう」
「おばあ様」
いないはずの5人目。
この聖地に老女が現れた。
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