第72話説明

オリヴィアの説明はこういうものであった。


常人より体力があるとはいえ、所詮は女子高生。


長旅の疲れにより、列車の中で思わず2人して寝てしまった。


そのまま降りるべき駅を通り過ぎてしまう。


「その時は、この世の終わりかと思ったよ。」


「大げさだな」


「だって、この瞬間もボクを差し置いて、一樹が別の女とイチャイチャしているのだもの」


「してないって」


「そうか。あれがフツーのスキンシップであるなら、ボクも半裸で一樹とお風呂に入ったり、添い寝をしたりしていいってことだよね?」


ジト目でオリヴィアは言う。


「よくない」


その話は後にするとして、今はその説明を続けてくれ。


「釈然としない気もするけど、一樹の言うとおりにするよ」


といって、オリヴィアは話を再開。


時刻表を見ても、次に来る電車はかなり後。


途方に暮れた2人は、一度その駅から出ることにした。


とは言え、当然行くあてなどあるはあずがない。


異国の見ず知らずの土地を、金銀の髪をした美少女2人が彷徨う。


もちろん、夜の街をだ。


「かなり危険な状況じゃないか」


変なお兄さんからしたら、カモが2匹一緒に寄って来てくれるように見えちゃうぞ。


「そうなんだよ。やけに目立っちゃって、最悪だった。本当に心細かったんだからさ」


嫁(自称)が俺に抱き着いてくる。


嬉しいけど、やめてくれ。


続きであるが、歩き続けた2人は大きな駐車場のような場所にたどり着いた。


そこは、道の駅である。


こんな時代であっての、トラック輸送は存在しているのだ。


「だから、ボクたちは思いついたんだ」


「こいつが言い出したのだ。私がやったのではない」


「何をやったんだ?」


「色仕掛けで、運転手を利用したんだよ」


「確かにそれは思い出したくもないよな」


酒が入ってるやつもいるだろう。


まさに、猟師の中に獲物が突っこむようなものである。


「それで、偶然行き先が近い運転手を見つけて、乗せてもらったんだよ」


「友達2人で、遠い親戚の家に行こうとしているという設定だったな」


サーシャが嫌そうに吐き捨てた。


「だから、ボクは優しそうな運転手さんにお願いした。トラックに乗ってる最中、

いろいろ聞かれて誤魔化したけど」


「電車を乗り換えると遠くなってしまうが、その道の駅からこの基地はそんなに遠くなかったらしいのが唯一の救いだ」


「それは災難だった」


「そうなんだよ。ボクが媚びる男性は、一樹だけで十分なのに。あの男ときたらさ」


そうしてくれるのはうれしいのだが、できれば控えてほしいな。


俺に抱き着こうとしないでね。


「私も二度とあの男とはかかわりたくない」


「そうだろうな」


日本では銀髪少女はもの珍しいからな。


かなり、興味深い目で見られたはずだ。


「ということで、自分の身を切ってまで、愛する夫のもとに献身的な妻は駆けつけたんだよ。分かってくれたかな?」


「そうだな」


俺を思ってやってくれたってことは、理解できたよ。


「本当? 一樹、だーいすき」


そう言って善良な魔女が抱き着いてきた。


いつも思うが、こいつは自分を安売りし過ぎていないか?


「話は理解できました」


そう言ったのは黙って聞いていたこの基地の責任者でもある桜子。


「それでは、正式な入所手続きをしましょうか。お部屋に案内しますので、わたくしについてきてください」


声は冷ややかだ。


おそらく、これから義姉と義妹の戦いが始まるのだろう。


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