第63話攻略

「さあ、お答えください。ひょっとしたらですが、わたくしには二人も新しい姉ができるのですか?」


桜子が俺に迫ってくる。


「どっちもただの友達だよ」


一応、攻略中ではあるが。


「本当ですか?」


さらに近づいてくる。


俺より身長が低いので、顔と顔が当たりはしないけど、それでも距離が近いと思う。


妹同然とは言え、かわいい女の子。


心が少しときめいた。


「本当だよ」


「なら、安心ですわね」


これで、話がこじれないで終わる。


そう思った時であった。


「両方とも、攻略中なのよね」


佐伯女史が乱入し、事態を大きくしてしまう。


「なるほど、”今は”お兄様の恋人ではないと。そういう意味なのですね」


冷えるような眼で俺を見つめる。


気温が何度か下がったように感じる。


こいつも、氷系の魔法を使うのか?


「いまだにお兄様の魅力を気が付けない愚か者ではありますが、いずれはお二人とも私の姉になられるのですね」


「そうかもね」


俺は視線をそらしてごまかす。


「では、早く挨拶をしておいたほうがいいでしょう。彼女たちが、お兄様の相手にふさわしいか見極める意味もこめて」


桜子は笑顔で言ったが、鈍い俺でも作り笑顔であるとわかった。


「でもさ、こっちに来るのは嫌なんじゃない?」


異国の見知らぬ場所へ、好んで行かないだろう。


「それなら大丈夫よ」


「何がですか?」


そう言ってきた佐伯さんに困惑。


「先程、私のもとに連絡があったのだ」


そのまま、教官は続ける。


「悪い予感がするから、そちらに向かいたい。詳しい場所を教えてくれとな」


「まあ、お姉さまたちが、こちらにお越しくださっているのですね」


桜子は作り笑顔で、そう言ったのだった。


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