第5話迷い

「AF基地内にある高校に転校できるんですよね? そこには当然、俺と同年代の娘が何人もいる」


「高校と言っても、特別クラスがあるだけ。そんなに在籍人数が多くないらしいわ」


「それでも、何人かはいるんですよね?」


「そうね」


「彼女たち美人ですか?」

 

これ以上首を突っ込んだらやばいことになる。


 そう思いながらも、”ハーレム”の響きには抗えなかった。


「写真があるわ。見る?」


「ええ。ぜひとも」


「ほら、この娘」

 

佐伯さんが出した写真に写っていたのは、


「うお、すごい美人」

 

銀髪美少女。


切れ長の瞳にしびれてしまう。


軍服姿だが、それがまた似合っている。


 クール系美少女だな。


 軍帽がかわいいと思う。


「どう? この娘とお近づきになれるのかもしれないよ」


「でも、危険は多いからな」


 しかし、俺は“ハーレム”の響きにひかれていた。

 

どうしても頭から離れてくれない。


「ほかの娘の写真もあるわよ」


次の写真が渡された。


「金髪美少女」

 

ショートカットでボーイッシュ。


 そのほほ笑みは俺のハートをわしづかみにする。


 こういう美少女も好きだな。


「イギリスで続いていた、魔女の家に生まれたそうよ。森の魔女。ゴールデンウッドっていうらしいわ」


「魔女ですか?」


 そんなのもいるのね。


「そう、異世界化する前の時代から、強いマナを受け継いでいたらしい。その一族は、AFの創立にもかかわっているとか」


 私もそこまで詳しく知らないけど。


 佐伯さんはそう付け加える。


「そうですか。そんな一族が」


 写真にマナが宿っているのか?


俺のハートに魔法がかかってしまった。


 マナの制御が甘いな。


「この娘たちと同じ学校に通う」


 魅力的すぎる話だ。


「どう? 断る? ほかのテスター候補から選ぶこともできるから、早めに返事が欲しいわね」


 遠まわしに「今、ここで決めろ」と言っているな。


「あなたができないというなら、どうしようかしら? ほかの候補はマナが弱いから困るなあ」


佐伯さんは、手に持った小型端末をスライドさせる。


「やっぱり、いい人材はいないわね」


 わざとらしい言い方だ。


「俺は、どうすればいいんでしょう?」


 本当にわからない。


軽い気持ちで話だけ聞きに来たのに。


 まさか、こんな人生を決めるかのような決断をしないといけなくなるなんて。

夢にも思わなかった。


「あなたのしたいようにすれば、いいんじゃない?」


「俺がしたいように」

 

望むのは、借金の返済。


女手一つで俺を育ててくれた、おふくろ。


あの人に楽をさせることだ。


ある意味、それのいいチャンス。


「テストをしている最中、俺が動けなくなるような負傷をしたら、遺族に手当ってでるんですか?」


「労働条件なら、この紙に詳しく書いてあるわ」


 この決断が、俺の人生を決める。

 

だが、この時の俺は、そのことに気が付かなかった。

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