第9話

 私は平成十四年に脳梗塞に罹患し、会社を妹のきい子さんに譲っている。

そのきい子さんが「兄貴、店を残してくれて有難う!」と言ってきている。

私はその言葉だけで癒される。今の店は、老人ホームのようだと言うが、売り上げが良けりゃ、それで良し。


 私が店を辞めてから十年立つが、その頃は警備会社へ入った。

安給料の汚い仕事だった。それを四年続け、老人ホームの調理師になろうとするが、三件で断られ、後の二件は己から辞めている。

一件は、仕事中にクビを宣告されている。あの時は、己が脳梗塞患者だということを知らないでいた。

それを知ったのは、それから三年後、居酒屋で転倒し救急車で運ばれた阿見医大での診断だった。

その際、私は右側の頭部血管が詰まっていた。左手の様子が変なのは判っていて、その治療は、龍ヶ崎の接骨院でしていた。

まさか己が脳梗塞だとは気がつかなかった。今でもそうだが、左手の指が反応してくれない。もどかしいが、それが現実。

その上に右目を潰してしまった。それが原因で、この協奏曲の老人ホーム入りだ!ここに入って、既に二年経とうとしている。

何の進歩も無いが、文章作りの腕は、少し上がったと思う。今年の新潮に五本の作品を出してある。今年の十一月が楽しみだ。


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流転  @kounosu01111

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