第12話 4月1日(木)美紀がやってきた⑧
それを聞いた美紀は、今度はお腹を抱えて笑い始めた。しばらく笑い続けた後、
「ハアハア、いやあ、やっぱり今日はいいねえ。こんな日でないと絶対に言えないセリフだったけどバッチリ決まった。ハアハア、頼むからやめてくれ、自分で言うのもなんだが、お腹がいたくて死にそうだから。おかげで元気が出ただろ?ハアハア、今日は何月何日なのか忘れてないだろ?ハアハア」
ここで、僕と姉さんは美紀の意図に気付いた。
「おまっ・・・やられた・・・」
「・・・やられたわ・・・グーで殴りつけてやろうと本気で思ったわ。『絶対にみっきーが私の義妹になるのは認めなーい』って言い返してやろうと本気で思ってたから、ダメージ大きいけど・・・さすがね。まさにエイプリルフールでないと言えないわね」
「ハアハア、本気で言う訳ないだろ?こんなモヤシ男じゃあ、私と釣り合わないだろ?」
「それもそうね。今日は私と猛の完敗ね。」
「僕もそう思います。」
「あ、そうそう、1つだけ猛に聞いていいか?」
「え?」
「あたしってそんなに可愛いか?」
「おまっ・・・聞いてたのか?」
「ふふっ、バッチリ聞こえたぞ。」
「ハア、やっぱり美紀は変わってないな」
「ふん、どうせあたしは可愛くないですよー、だ」
「・・・・・」
「おーい、みっきー、さっきの続きをしようぜ」
「そうね。そういえばココア冷めちゃたからレンジで温め直しましょうか?」
「お、頼むぞ。猛もコーヒー温めるか?」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「おーし、じゃあ、徹夜で飲み明かそう!」
「おいおい、美紀。母さんたちじゃあないんだぞ」
この僕の言葉を聞いた姉さんが、ある事に気付いた。
「そういえば・・・美紀ちゃんが、さっきまでそれこそ近所に丸聞こえのような大声を出して、それこそ私たちと口喧嘩のような事もしてたのに・・・」
「「「・・・何の反応も無いなんて・・・」」」
「「「・・・まさか・・・」」」
僕たちは顔を見合わせた後、真っ青になった。
そして、慌てて小走りに客間の前に行った。やがて、姉さんが意を決したかのような顔をして、襖を一気に開けた。そしたら・・・2人共、もう既にビールを全部空にして、それでもまだ足りないのか、客間に置いてあった日本酒の一升瓶に手を出していた。たしか、去年の暮に美紀の家からお歳暮として送られてきた、かなり高級なお酒だったはず。しかも、まだ未開封だったのに、もう半分近く無くなってる。それに、もう口調がべろんべろんで、いわゆる「酔っ払い」である。
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