かくして、少女は死と踊る

作者 八束

現代社会に飼い慣らされ、消耗しているかつての少女たちへ

  • ★★★ Excellent!!!

はじめまして、名もなきニートです。
今では立派な無職の私も、かつてはカイシャで働いていたことがありました。
日曜日の夜になるたびに、明日からまた朝から晩まで働かねばならないのか……と憂鬱のあまり死にそうになっていました。時には酒を浴びるように飲み、気づいたら風呂場で寝ていたこともありました。
そんな典型的プロレタリアート生活の中で出会ったのが、本作の前身である『Lost Corner』という小説でした。
「『ダークジュブナイル』ってなんだよ……」などともっともなことをぼやきながら1ページ目を開いたら、冒頭でヒロインが蹴り倒されていました。それは当時かわいい新入社員だった私にはあまりにも衝撃的で、明日の仕事に関するすべてを忘れてしまったほどでした。
その後も怒濤のように押し寄せてくる反骨精神に満ちた展開(具体的にいうとヒロインがことあるごとにドアマットにされる)に、瀕死状態だった己の野生が息を吹き返すのを感じました。そして私はカイシャを辞め、長く険しいキングオブニートへの道を歩みはじめたのです。

そんな少女小説界のポスト・ハードコアである『Lost Corner』の改稿版『かくして、少女は死と踊る』は、現代社会に飼い慣らされ、消耗しているかつての少女たちにぜひ読んでもらいたい小説です。
本作では改稿前同様に、優秀で強気でほどよく生意気な主人公・ユリアナが、いきなり軍人に蹴り飛ばされます。心があたたまりますね。
その後もユリアナは身に覚えのない罪で連行されたり、流砂に巻き込まれたり、足拭きマットにされたり、片足をもがれたり、スケベされたりと、着実にコンボをつないでいきます。もちろん、美形軍人であるクラエスの着替えシーンや、彼とのキッッッッッス、そして優しくてリッチな養父との身も心も温まるふれあい等、サービスシーンもばっちり完備されています。
乱高下を繰り返すストーリーはジェットコースターのようで、本作を読んでいるあいだはすべてを忘れられます。だからこそ、プロレタリアートだった私は『Lost Corner』をキメることで、現実から逃れることができたのです。現在は本作を軽くたしなむ程度ですが、それでも、ユリアナの受難を追いかけているときは夢気分です。
しかし、本作の効能は逃避だけではありません。ユリアナが自由・闘争・性愛を試され、乗り越え、そして成長していく様を追体験することによって、私たち読者も生きる力を取り戻すことができるのです。
定時退社するんじゃねーよという同調圧力に屈せず、自腹を切らねばならない飲み会の誘いを断り、ときとして上司の顔に辞表を叩きつける……そのための勇気を、『かくして、少女は死と踊る』は育んでくれはずです。

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