そして趣味の毎日へ
daily03-01
ガイアを呼び出して、至る所に大きな穴ができた戦場の後片付けを頼んだ。
本当は俺がやるべきなのだろうけどなぁ。
だけど、早めに整地しとかないと、万が一誰かに見られたら「何があったんだ」と騒ぎになるだろう。それは避けたい。
その程度造作も無いとガイアは快く引き受けてくれた。
ガイアに礼を言ったあと、俺達は自宅へ戻る。
アレス、アテナ、アルテミス等コーチ陣も着いてきた。
うーん、多少暴れてすっきりしているアレスはともかく、後ろで俺の戦いを観察していたアテナからはお叱りが必ず来る。
それもきっつい奴が来るに決まっている。
だが、心配してくれているからだと信じるし、本当のところは疲れていてどうでも良い気になっている。
アルテミスは、ネサレテとベアトリーチェがヘラクレスの助力で得た新たな力を知りたいということらしい。
俺も知りたいが、今は無事に帰れるだけでいい。
落ち着いた時に訊けばいいしな。
エリニュスは「今回は出番が無かったな」と、寂しいのかそれとも安心しているのか判らない複雑そうな表情で、ヘラの家へ戻っていった。
明日以降でも、エリニュスの労をねぎらわねば。
四凶と一体化したせいか、ネサレテが放った
ヘラクレスは、何が嬉しいのか判らないけれどニコニコして「ではまた会おう」と言って天上界へ帰った。助力には感謝しているし、ま、あの可愛らしい奧さんヘーベーと仲良く暮らすがいいさ。今度来るときは、腰布一枚で来るんじゃないぞ。
ボーダーコリーの姿に戻ったテューポーンを抱き、「さすがはあなたです」と誇らしげなエキドナも我が家に寄ることになった。
デイモスを倒したのだから、テューポーンのこれからのことを決めなければならないからだ。俺の言うことは聞くけれど、強大な力を持つ怪物を、目の届かない状況で世界をぶらつかせているのもどうかと思うしな。
……とにかくだ。
ギガースの身体を手に入れたデイモスを討伐したのだから、ゼウスとの約束は全て果たしたということになる。
テューポーンは俺の支配下に入ったし、
これで余計なことに振り回されず、趣味三昧の生活を送っていいはずだ。
「みんなお疲れ様。ネサレテとベアトリーチェは風呂にでも入って休んでくれ」
今も睨んでいるアテナから俺はこれからとことん説教されるはずだ。
正直、アテナとアルテミスが俺の背後で何をしていたのか判らない。
多分、ネサレテとベアトリーチェのサポートのために控えていてくれたのだろう。
だけどさ?
俺は頑張ったと思うんだよ。
まあ、テューポーンが居てくれたし、ヘラクレスの助力もあったから勝てた戦いだったってのはよく判ってる。
だが、そもそもだ。
ギガースとの戦いはゼウスと約束したけれど、デイモスだの四凶との戦いは契約外のはずなんだ。
本来は、神々の仕事じゃねぇの?
口には出せないけれど、説教される立場じゃないと思うんだよねぇ。
考えてみると、つくづく損な役回りだよなぁ。
指をクイックイッと動かし俺を呼ぶアテナを見て、やっぱり来たなとため息をつきたくなる。
「ヘラクレスも言っていたが、お前には覚悟が足りない。戦いの師として我が恥ずかしいではないか……」
ほらね。
アテナ、本当に美人なんだよねぇ。
ヘラやアルテミスのような柔らかさを感じる女性的な美しさと違うけど、端正でキリッと締まっていて、氷の女王といった美しさ。本当に美人なんだ。
だから、クドクドと説教などせずに居てくれれば、アテナと知り合えたことを心から感謝すると思う。
しかし、目の前の美女神は目をつり上げ、ダメ出ししまくっている。
心情的には、美しさも台無しだよなとウンザリするし、言いたいことも多少はある。
でも、逆らって口答えなどしてはいけない。
正座させられずにいるだけマシだと思っておこう。
「こらっ、きちんと聞いておるのか?」
「あ、はい。もちろんですよ」
「まあ、今日はこの程度で許してやるが、次の訓練からはこれまでより厳しくやるからな」
「え? これからも訓練するんですか? デイモスは倒したし、ギガースとテューポーンの件も落ち着いたのに……」
「何を言っているのだ。ひとたび弟子にしたからには、師としての責任が我にはある。ひとかどの戦士になるまで続くに決まっておるだろう」
「ちょっ! 私は戦士になどなるつもりは……」
「口答えなど聞かぬ」
もしかして、師匠役が気に入ってるだけなんじゃないだろうか?
何せ現代の神々は、信者も減り暇を持て余している。
いいオモチャが見つかったと思っていても不思議じゃない。
「そうだぞ、諦めろ」と、アレスは悪い顔して言うし、アルテミスも「ま、我はネサレテ達を教えるから、お前にはノータッチだがな」と澄ました表情で言っている。
ゼウスもゼウスだが、アレス達も大概性格が悪いよなぁ。
「おお、駿介。何とか倒したようだな。お疲れお疲れ」
……
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