counterattack02-06
「玖珂さん、依頼されていたテロリスト達について判ったことがあります」
ライト・マーカスが牧場に戻ってきて、気難しい表情で報告を始める。
いつもはA国の人間らしく、どちらかというと明るい雰囲気のライトだが、今日は違う。
「彼らが民族解放人民戦線のメンバーなのは確認できました。ミハイルにも照会して貰い間違いないようです。羽田梨奈と別れたあと、彼らはC国の船舶で脱出し、C国に入国しました」
船舶から下りたところの画像を見せ、俺に確認する。
画像を確認すると、確かにこの男達で間違いない。
「その後彼らは、C国の軍施設に入ります。玖珂さんを襲う計画にC国が関与しているのは間違いないでしょう。そこで我が国から、玖珂さんへ手を出さないよう水面下で警告を伝えたのです」
「その結果は?」
「返答はありません。これは異常です。通常、何らかのアクションがあるのです。関与していないとしらばっくれるのが普通ですが、とにかく返事が何らかあるのです。しかし、まったく反応が無い」
「それで?」
「玖珂さんの件で協定を結んでいる各国にも事情を伝え、C国に再度警告しました。しかし、やはり反応がない」
「玖珂さんの件では、我が国は単独で動くわけにはいきませんので、各国と協議しました。もちろん内々でですよ? それで報告に時間がかかってしまったのです」
「協議の結果どうなった?」
「……玖珂さんが、C国へどのように対処しても、各国は関知しない」
「C国の軍施設へ攻撃しても騒がない……そう受け取っていいのかな?」
「我々は何も関知しない。以上です」
「ハハハ、お墨付きをいただいたわけだ。だが、どこまで許してくれるのかな? C国は核施設も持ってるだろ?」
「一切、関知しないとしか言えません」
ライトは無表情で俺をじっと見ている。
まあ、俺なら何とかできるだろうと思っているのだろうし、それは間違っていない。
どのように対処するかを聞いてこないところからも、ライトの気持ちが伝わってくる。
「判った。好きにやらせて貰おう」
「……それでですね」
「ん? まだあるのか?」
「羽田梨奈が誘拐されました」
「は? なんでだ……」
「ここのところこの牧場に頻繁に通っていたでしょう?」
「ああ、……!? こちらに情報を流してると疑われた?」
「多分」
「……どこに囚われているか判るか?」
「はい、それは調査しましたし、うちのエージェントが今も張り付いています。現在、C国大使館に囚われています」
クロノスに力を貸して貰えば、助けるのは可能だ。
問題は、助けたあとだ。
この先も狙われることのないようできるかだ。
救出するということは、俺と彼女は何らかの関係にあると確信させることになる。
今回助けたら、次回からは誘拐ではなく殺害する方向で考えるかもしれない。
それを防ぐには、どうしたらいい?
民族解放人民戦線を壊滅させた上で、C国に思い知らせるしかない。
俺と関係者に手を出したら酷い目に遭うと判らせるしかない。
……畜生……デイモス退治がここまで大きな話になるとはな。
国家を相手にするなんて思わなかったぞ。
テューポーンの件もあるんだ。
面倒ごとはこれ以上増やさないで欲しい。
「判った。羽田梨奈は今夜にでも救出する。あと、C国の件は好きにやらせて貰う」
「私は何も聞いていませんよ。そこはお願いしますね」
「ああ、そういうことにする」
牧場事務所へ戻るライトを見送り、俺はクロノスを探した。
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