counterattack01-06

 武田、ライト、ミハイルが居間に揃ったところで、俺は今日映した三名の画像データをタブレットで見せた。


「来て貰ったのは、この三名を調べて欲しいからだ。中東系の男性二名は多分テロリスト。女性は……」

羽田梨奈はねだりな……日本に戻ってきていたのか……」


 武田が女性の画像を見てすぐつぶやいた。


「知っているということは有名人なのか?」

「日本人テロリスト羽田孝治はねだこうじの娘だ。父親は逮捕され無期で懲役に服している」

「娘もテロリストなのか?」


 二十代後半くらいの黒髪の女性の画像を再度見て、その微笑んだ瞳にあるふてぶてしさの理由が少し判った気がした。幼い頃から場数を踏んでいる人間なんだろう。


「いや、疑いがないわけではないのだが、今まで事件に直接関与した証拠はない」

「じゃあ、どうして羽田梨奈の顔を覚えているんだ」

「父親が関係したいくつかのテロ組織と繋がりがあるのは確かなんだ。何度か接触しているところを確認している。C国とも繋がっているようで、スパイ容疑がかかっている。担当部署が違うから私は追いかけてはいないが、調べることはできる」


 なるほど。

 関係があるのは確かだが、何をしてるのかは判らないのか。


「じゃあ、羽田梨奈は武田に頼む。最近の動きを調べて欲しい」

「どのみち監視対象だから構わないが、理由はなんだ?」

「俺達は今日狙われた」

「狙われた?」

「ああ、爆弾テロに巻き込まれそうになった」

「そんな事件は起きていない。どうして爆弾テロが……」

「信用できないなら頼まない。こちらで調べるよ」


 うまく敵の尻尾を捕まえられれば、武田の手柄にもなるだろうと考えてのことなんだが、話せない事情まで聞き出そうというのなら俺自身がやる。

 本当はその方が楽に捕まえられるからな。

 だが対処はというと、拘留施設なんか持っていない俺達は、冥府送りにする可能性が高い。

 俺とネサレテの命を狙った奴らと手を組んでるのだから、いくら若い女性に弱い俺でも許すつもりはない。そもそも公に出せる証拠を揃えるつもりがないんだから、警察に渡しても意味がない。


「……言えない事情があるってことか……。判った。羽田梨奈は私の方で調べよう」

「では、男達は私とミハイルが調べるとしよう。データと照合すれば数日で判る。調べるだけでいいのか?」


 武田に続いてライトが意見を出す。


「男達は実行犯だ。できれば逮捕した方がいい。逮捕の理由なんかどうとでもなるんだろ?」


 ニヤッと笑ってライトは横に座るミハイルに顔を向けた。


「実際は、うちよりそちらの方が情報持ってるだろうがな」

「……多分そうだな……。情報は渡せるだろう。だが、逮捕はライトのほうでやってくれ」


 なるほど。

 R国は繋がりがあるかもしれないってところか。

 A国が逮捕する分にはR国国内で……部署間で問題が生じそうにないのだろう。

 非合法活動でテロ組織を利用している部署がR国にはあるのだな。


「できれば、男達の方はC国や大本の組織と繋がるルートを掴んで欲しいんだ。じゃないと、俺が画像撮ってきただけで済ませた意味がない」

「ああ、そのつもりだ。玖珂、その辺の心配はいらない。下っ端捕まえてそれで良しとする私達じゃないさ」

「今日はあなた達三名にお願いしたが、他の国のエージェントにも情報を流した方がいいか?」

「いや、その必要はない。というより、止めておいてくれ。内輪でも面子があるんでな」

「それじゃここに居る三名にお任せする。宜しくお願いしたい」


 いつまでも受け身でいられない。

 こちらから攻めて、俺達の穏やかな日々を取り戻してやる。


 敵はこちらの事情なんか考えやしない。

 俺もいつまでも小市民のままでいられないんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る