riot01-02
状況が落ち着かないと、俺のキャパを越えそうだから、ペット牧場の拡張は当分の間止めておく。
現状を維持するだけなら、神田に任せておけば問題ない。
別に放置しておくということじゃない。
そりゃ俺がやらねばならないことはやるさ。
ただ、新たなことには手を付けられない。
あと、過去からの救出も、ベアトリーチェと駒姫にしばらく任せる。
駒姫は、秀次の側室と子供達を救出したい気持ちが強いから、それを優先する。
おさなが現代に多少慣れ、状況の変化も理解してきたから、駒姫を手伝ってもいい。
クロノスとベアトリーチェが居るのだから、危ないこともないだろうしな。
そして俺は、ネサレテと一緒に、再び鍛錬の日々を送ることとした。
今度は天上界で……。
・・・・
・・・
・
ゼウスが支配する天上界には、オリュンポスの神々が生活している。
しかし、まとまって暮らしているわけではない。
各神は、自分の気に入った場所に
ゼウスが言うには、天上界というのは神の種族毎にあるらしく、例えば、日本の神々が住む高天原もこの天上界とは別の次元空間に存在するらしい。
どの人間を、自らの信者とし守護するかは今では大雑把らしい。
基本は守護地域として決まっているらしいが、守護地域に居る他宗教の信者はその信者が信じる神の扱いになるとのこと。死者の魂の管理も同様らしい。
おかげで、現代は地球上のあちこちに目を配らねばらならず大変なんだよと愚痴っていた。
神の世界もグローバルなんだなと感心してしまった。
「仕方のないことだが、軍隊にも入っていない一般人のおまえ達は戦いの経験が少ない。だから、能力はあっても活かせないことが多い。そこで、玖珂駿介はひたすらアレスと戦え、ネサレテはアルテミスの指揮に従って狩りをせよ」
どこかの国のものなのか、それともオリジナルなのか判らないが、襟と腰に赤いラインが入った黒い軍服にゼウスは身を包んでいる。
アレスは俺を、アルテミスはネサレテを連れ、訓練の場所となる二人の領地へ向かうこととなった。
「ここなら思う存分戦えるぜ。玖珂。遠慮せず向かってこいよ。人間界での時のように周囲を気にすることもないぜ」
アレスの領地に連れてこられた俺は、だだっ広い草原で対峙している。
ここで毎日一時間、ひたすら戦いを繰り返すことになった。
雲はなく、無風に近い。
動物はもちろん、虫の声すら聞こえない。
俺達が知る人間界の草原とは少し雰囲気が違う。
目の前のアレスは、動きやすい軽装の鎧を纏い、素手で身構えている。
俺は、片手剣とラウンド・シールドを持ち、アレスの攻撃をいつでもかわせるよう集中している。
――何が遠慮せずにだ。自分が遠慮しないだけだろうに……。
人間界で訓練していた時より、アレスの身から放たれてる
アレスとの戦いでもっとも嫌なのは、攻撃のパワーやスピードじゃない。
俺の身体にたたみ込まれる痛みだ。
素手でも、武器を用いても、こちらが盾や剣で防御してもたたき込まれる。
しっかりと防御し、威力を受け流しても、アレスの持つ異能で伝えられた痛みは、身体を強ばらせさせられるほどきつい。耐えられないほどでないが、痛みを堪えるため攻撃に移れなくなる。
本来は、攻撃を受け流してカウンターを仕掛けたいのだが、それができないのだ。
だから避けきらなければ、防戦一方となりやすい。
よって、アレスとの訓練では、回避に集中する。
回避七割、攻撃三割くらいの意識で戦わなければならない。
攻撃は最大の防御……なんてのは、相手に防戦を強いらせられるだけの攻撃力がある者だけが言えることだ。少なくとも今の俺はまだそんなことはできない。パワーだけはアレスを上回っているようだけど、スピードとテクニックはアレスに軍配が上がる。
攻撃してもうまくいなされると、すぐ反撃されて防戦の時間が長くなりやすい。
人間界でより天上界でのほうが、アレスは戦いやすそうだ。
これからが思いやられる。
――数時間とはいえ、毎日こいつと訓練すんのか……。帰宅後は何もできそうにないな。
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