明らかになる秘密
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アスクレピオスの治療で健康になった、ルイ・ジョセフとルイ・シャルルを手許に置き、へラは母のように二人に接している。しかし、自分の美しさを褒め称え、愛を注ぐような美青年ではなく、七歳と十歳の子の救出を望んだ理由が判らない。
牧場のバイトや訪問客からの賞賛だけで満足しているとも思えないけれど、それは俺の偏見かもしれないので、この感覚にはちょっと自信はない。
もちろん彼らを助け、姉に安息を与えられたのは喜んでいるし、今回の件に不満はまったくない。
恩も売れたからな。
だが、可哀想な目に遭った子などいくらでも居る。
非力な分、大人よりも多いだろう。
貧しい地域なら、ジョゼフとシャルルよりも悲惨な生活を送っている子は昔も今も大勢いるはずだ。
なのに、何故?
それに、まだ気になっているのは、へラがこの牧場で暮らすと決めた理由。
「へラ様、ジョゼフとシャルルとの暮らしはいかがですか?」
俺は考えていても仕方ないから訊いてみることにした。
「ん? 話していなかったか? ルイ・シャルルの絵を見て、そのあまりの可愛らしさに我の母性が
「それだけですか?」
「他に理由が必要か? 美しいもの、可愛らしいもの、それらに心を動かされるのは、男性も女性も同じではないか。おまえも美しい女性が好きであろう?」
「私はそうです。ですから趣味で悲劇に遭った美女を助けてるのですが、へラ様も同じような理由とは思いませんでした」
「我もな。おまえ達を見ていなければ考えなかっただろうな」
つまり思い浮かばなかったということか。
いや、クロノスはタルタロスに閉じ込められていたし、ホーラーはテミスの娘だから最初から頼めない状況だったから、考えついたとしてもできなかったんだな。
「あの、あとへラ様がここで暮らす理由なんですけれど……」
「ん? だから養子となったおまえの……」
「そういう誤魔化しはいいんです。はっきり言って下さい」
「……二つある。一つは、おまえが半神になる前に何故神の言葉を理解できたのかを調べるためだ」
確かに、それは俺も知りたい。
平凡な人間でしかないはずの俺が、神々の事情に巻き込まれてるのはそのせいだからな。
「もう一つは?」
「デイモスの動きが怪しいのでな。地上に居た方がその動きを感じられるのだ」
「怪しいとはどういう?」
「デイモスの力が強まっておるのだ」
「するとどういうことになるので?」
「取り憑いた相手によっては、大変な事態になるかもしれぬだろ? その際、現在の人間界のことを知っておいた方が良いかも知れぬ。だからおまえのところに身を置きながら、この世界を学んでおるのだ」
学んでいるねぇ……現代のファッションは学んでいるよな。
今もどこで知ったのか、スパンコール付きの黒いチャイナドレスを着ている。
胸元を大きく開いてるから、目のやり場に困ってるんだ。
しかし、そうか、デイモスの力が強まっているというなら、へラの言うことも判る。
「どうにかできるものなんですか?」
「判らぬ。だが、放置しておくこともできぬよ」
ほう、こうしているとさすがは神々の女王だ。
威厳を感じたよ。
「他に用はないか? 無いならあの子達の元へ戻らねばならん。今日はこれから犬たちと一緒に遊ぶ約束しておるのだ」
「また何かありましたら教えて下さい」と言うと、いそいそと立ち去った。
しかし、あの格好でペットと遊ぶのかな?
神々は自分の衣装を自由に生み出せるようだから、汚れても、ダメにしても構わないのだろうけれどさ。
子供達と遊ぶ約束か……あのへラが本当に母親してるんだな。
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