第72話 尊い心

 悩んだが一つは決まっていた。

「俺の知り合いに巫女の婆さんがいる。その頼みでここに来た。白い花を持ち帰る為の旅だった。白い花はどこに咲くか教えてくれ」

「それで良いのか」

「ああ。それで良い。あと二つあるから良いんだ」


少し沈黙の後、クリシュナゴーンは語り始めた。

「この山にはもう無い。が、この私が花を咲かせてやろう。どこが良いだろうか」

「取りやすいところが良い。それにあいつがいない所が良い」

「それもそうだ」この辺りではどうか」

「良いだろう。そうしてくれ。早く咲かせてくれないか」

「そう我儘を言うな。七日待てば咲かせてやる。次は何を聞く」


「そうだな・・・・」

悩む所ではあったがこれを聞かないと済まないのは絶対であった。

「それでは、虹一族はどこにいる。何処かにいる様に思うのだが」

「それを聞くのか」

後ろからミランダが俺の肩を掴み、質問を変える様に言う。

「良いんだ。この質問の方でいい。お前は俺のために涙してくれた。そのお礼と言ったらおかしいが、この前湖のほとりで言っていたじゃないか。きっと仲間が残っていると。だったら聞いといて損は無い」

クルシュナゴーンは眼を瞑り、何かを考えている様であった。

「わかった。ここから南に行く事三百日。大きな湖がある渓谷。ガジュマル・ガジタに行けば良い」


「三番目の質問は、アの国の水をなんとかしたいのだがどうしたら良いのか」

「ダメ。それはダメ。この質問は最後の」

「ソレア良いんだ。何も言うな」

「なぜ」

「だって俺、女王の夫だぜ。国民を守るのは使命だろう」

「でも」

「クンタに言おう。それ泣いたって。あいつはお喋りだから国中に広まるだろう」

泣き崩れるソレアにかける言葉もなく、クリシュナゴーンに催促した。

「お前にこの石をやろう」

そういって20個の石をくれた。

「ソレアよ。お前は良き伴侶を持ったものだ。またお前の民は真に尊き心の王を頂いた。この世界の頂となり、幸いとなれ。お前がおいた時水が溢れ出でんことを約束しよう。が、その黒い石は癒しの石だ多くの民の病気平癒に役立とう。心して置く場所を考えよ」


 クリシュナゴーンに礼を言って村まで帰って来た。多くの村人が待ちわびていた。ソレアはオレを気遣っていたが、俺は何も敢えて言わなかった。ミランダの願いも叶い、彼女もこれで行く所ができた。俺が居なくなっても彼女たちは次の目的ができた。不幸にはならない。俺はこれでクルドと二人旅になると考えて居た。


 落ち込む二人に対してウキウキの俺。対照的な違いをコギリが気にして居た。コギリは母カイラに相談した。だが、カイラには大人の事情と言われて納得できないコギリであった。それで白神様のところに出向き、自分の思いを話して見た。クリシュナゴーンはただ黙って聞いて居たが、コギリの思いやりの言葉に笑い出した。

「お前は大人の事情を越えてる。気持ちは分かるが、アキオの思う様には行かないとだけ覚えておきなさい。あの者は自分の思う様に進んではいるのだが、心の根底は思いやりがある。その為歩み出すのだが思いの外に出くわすのだ。大御心の向く方に転がされて、驚くのがあ奴の生き様ということだ」

何も分からずに村に帰って来たコギリ。母カイラに迎えられて夕食を取って居た。


 カイラはアデヤを看病し、何とか一命を取り留めた。明日は七日目の花を摘む日に決められている。花をこの人に与えれば元気になり、アの国に帰ってしまうと悲しい女心を抱いて居た。



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