第34話 三つの課題

 クルドに課せられた課題は三つ。一つは俺を生きて村に連れ帰る。二つ目は聖なる木の実を食う事。三つ目はこの世界に八匹いると言われている聖龍様に会う事。課題は長老オルガが決定する。オルガは出来ない課題は与えないと言われている。が、こんな世間知らずに出来るんだろうかと俺は考えていた。後になってラディウスから伝えられた事に驚かされたが、まだこの時はクルドの旅に疑問を感じていた。この課題を達成できなければクルドは村に帰還出来ないらしかった。めでたく帰還が許され、ドラゴンの村にクルドが戻る時、俺の命は終わっちまう。困ったものだ。俺には俺の旅の目的があるのに、どうしたものかと思い悩んでいた。


「なぁ、クルド。少し話を聞いてくれないか」

「なんだ?人間」

「その人間って言うのはやめにして名前で読んでくれ。俺はアキオ。頼むよ」

「分かったよ。アキオ」

「ありがとう。実は俺はこの世界を旅する目的があるんだ。これは必ず達成しなくてはならないんだ。君の課題と同じでね」

「じゃぁ。お前も自分の村に帰るのか」

「そんなものじゃあ無いんだ。実は俺は、父と母を探す事が目的なんだ。どうだろう。手伝ってくれないか」

「ダメだ。お前はそう言って逃げる気だろう」

「逃げないって。逃げても君には勝てないから直ぐに捕まるだろう。そんな心配は無用だ。違うかい」

「ダメ!ダメったらダメ」

「分かったよ。ダメなら俺は君の手伝いなんかしないぜ。勝手に何処にでも行けばいいさ。俺を連れてけ。だが俺の飯を忘れるな。食わなければ死んでしまうんだからな。よろしく」

そう言って横になり寝たフリをした。クルドはどうしようかと困っていた。何も言わずジッとしている。進もできず、どの様に事を進めたら良いのかわからない。何処か昔の俺を思い出さずにはおれなかった。それで少し可哀想になり、助け舟を出す事にした。


「おいっ。気が変わったかい。俺の言う事を聞く気になった?」

「・・・・・・」

「何とか言えよ」

「俺様の課題が先だ。決まってるだろう」

「どうしてだい。クルド、君の課題が成就する時、俺の命は無くなるだぜ。俺の目的は果たせない。わかるだろう」

「でも」

言葉を吞むクルドの困り様を見て、俺は考えた。

「どうだろう。クルド。君の課題は後二つ。俺の課題は一つだ。これから君の課題を一つ達成しに行こう。が、これが終われば俺の目的を手助けしてくれ。この事を約束してくれるかい?」

「う〜ん。それならいいかな。約束しよう」

「俺は目的を果たし。君は課題を成就させる。まあ、俺は死ぬかも知れないが、目的が果たせればそれでもいい」

「じゃあこれからどうすれば良い」

クルドは直ぐに態度を変え、素直に俺に質問してきた。

「そうだな。若いドラゴンが東に飛んで行くのを観たから、東に行かないか?もし、何もなければその時はその時さ」


 俺はクルドの相棒となり、課題を達成するための大冒険にお供する事に決まった。


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