一話3〜5分程度で読める、夢をテーマにした短編集です。
基本的に一話完結ですが、シリーズ化されている話もいくつかあります。
寝て見る夢、将来の夢、夢中になれること、子供の頃に経験した夢のように思える出来事、現実逃避としての夢、二次元や異世界での出来事……。無理に感動させようとするストーリーではなく、全体としては、楽しい話、ほっこりする話が多いですが、読んでいるうちに、不思議な切なさも心に募っていきます。
子供から大人になってしまう切なさ、夢から醒めて現実に引き戻されたときの切なさ、ドラえもんがいなくなってしまった後のような切なさ。でも、夢の世界はいつでも日常の隣、君のそばにあるんだよ、と教えてくれているような、楽しさと切なさが交じった読後感がありました。
短編集! ショートショート! それは難しくて、センスが思いっきり問われるものだ! 何故なら一本一本がほぼ独立している話のために、その度に読者を世界観に引き込まなければいけないんだ! しっかしこの作品はそれができちゃってくれちゃっているんだよ! 特にそれができていると感じたのは『ポイントカード殺人事件』や『エスカレーター殺人事件』をはじめとした探偵おばさんシリーズ! あれよあれよという展開、まるで掃除機に吸い込まれる埃みたいに一気に引き込まれたぜ! もっともっと見ていたかった! 続編希望!
失礼しました。
今上にあげたものは怒涛の展開で笑いを誘うコメディ系の作品ですが、それだけのものではありません。かなりシリアスな『醒めない悪夢』や『あるいは Cat has nine lives』、不思議な空気の『自分メンテナンス』や『ノラ・クローン・パンダ・ジュニア』などなど。いろんな魅力詰め合わせができる、短編集の長所が十分発揮されている作品でしょう。一気に見てもよし、一本一本見ていくもよし、様々な楽しみ方ができる作品です。まずは興味がわいたものからでも見てみませんか?