たまにジャンル分けの意味が不必要な作品がある。
この作者だからこそ書ける、この作者にしか到達しえない、そんな物語のことだ。
紹介文にもあるようにこれはホラーである。
人の心に潜む悪意、邪推、後悔、そんな後ろ暗い感情をあらわに見せてくる。
同時にこれはファンタジーでもある。
しゃべるかわいいぬいぐるみは登場するし、物語のキーになるのは一遍の童話『宵待ち姫』である。
さらにミステリーでもある。
物語は数年前に亡くなった一人の少女の死を中心にして、その謎を解き明かすことで進んでゆく。
そして何より人間を描いたドラマである。
悲しいこともあれば、目を背けたい傷もあり、それでも再生してゆこうとする魂のしなやかさがある。
こう書いてくると、いかにも暗そうな作品に思われるかもしれない。
が。この物語、とにかく楽しいシーンがいっぱいなのである!
それはキャラクターの魅力によるものだが、語り口がまた軽やかで楽しい。
辛いシーンであっても、なにか明るい希望をもって読み進められるのである。
これはもう作者の持つ世界観、それを再現する文章の魅力に他ならない。
そして希望をもって読み続けた先に広がる美しい光景。
すべてを包み込む感動的で完璧なエンディング。
こんな作品が存在し、カクヨムという場で読めるというのは本当に素晴らしいことだと思う。
オリジナリティーあふれる、ここにしかない幻想的な物語。
ぜひ読んでみてください。
現代ミステリー小説の傑作です。
まるで映画を見ているような情景描写と生き生きとした登場人物で躍動感のある物語でした。見せ方も巧みで、何人かの視点で物語を追うことが出来ます。
多くのキャラクターが登場しますが、どのキャラもしっかりと造形してあるのでドラマチックな展開になっていました。更に展開を面白く読ませたのは、物語の進行です。過去の出来事を思い返す順番。この部分がより緊迫した状況や人物の心境を読み手に伝え、夢中にさせます。
主人公は不登校の女子高校生。
彼女が何故不登校になったのか、謎を含みつつ進行します。昼間は家に引きこもり、深夜は少年の姿に変装し街を徘徊する生活スタイル。
次にクラスメイトの視点になり、不登校の主人公が周りから、どう見られているか分かります。
この辺りまで読み進めてしまえば、作者さまの明るい雰囲気と独特のミステリーな調子を掴むことが出来るでしょう。
ゾクっとする出来事や、クラスメイト達の温かく楽しい感じなどが混ざり合い、物語を楽しめます。ストーリーの強弱に惹かれアッという間に読み終えてしまう。10万字近くある文字数が嘘のように感じるはずです。
ところどころに小さなフラグが仕掛けてあり、徐々に回収していく様子は自然でとても読みやすかったです。ミステリーな作風なのにそう感じさせない流れは、登場人物の個性に魅了されているからです。
おすすめの作品です。是非、読んでみて下さい☆
たくさんの個性的なキャラクターが登場する本作は一見キャラ文藝かとも取れますが、全てのキャラクターが一定のラインから前に「跳ね」ません。ですので物語そのものを楽しむことが出来ました。
ライトなホラーであり、友情の物語であり、親子の絆を確認する作業であり、己の深淵に潜む者との戦い。宵待ち姫はそんなお話です。
ラストへと向かう展開は作者様がこのシーンを特に書きたかったのだと解る怒涛の被せ方で、文体は変化していないのに読者は何故かアップテンポで一気読みしてしまいます。さすがとしか言いようがありません。
余談ですが作中に出てきた主人公の父親は私の好きなタイプのキャラで、このキャラでスピンオフを書いていただきたい気持ちが天まで高まっています。
本当に素敵な作品でした。
登場人物たちの軽妙なやりとりや温かい心にほんわかした気持ちになっていると、ふと暗がりに落ち込んでしまいそうな、ゾクッとする怖さも散りばめられていて目が離せません!
どうなるのー!どうなるのー!と読みだすと止まらない…
まるでフォンダンショコラアイスクリーム添えのような美味しさです!!
是非味わっていただきたい!!
そして…読み終わりました…!
フォンダンショコラアイスクリーム添えにつられた私を待ち受けていたのは、人の優しさや、悲しみ、愛、そして可愛いと笑いとアドベンチャー!!
というフルコースでした!!!
食後(?)は温かな気持ちにつつまれステキな物語をありがとう…と思うのでした。
ホラーが苦手な私ですが、紹介文に「ほのぼのファンタジー」と書かれていたため、気になり読み始めました。
個性豊かな登場人物たちが複雑に絡み合い、まるでミステリーのように、読めば読むほど不思議な世界へと惹き込まれていきました。
はたして、主人公の林〈りん〉が心の奥底に抱えるものはなんなのか?
惹き込まれながら読んでいくうちに……。
女の子らしいほのぼのとした日常に癒やされ。
油断をしているとゾクリと不気味な描写に襲われ。
いつの間にか手に汗握るドキドキがやってきて。
気付くとうるうる涙が出てくる……。
こんなホラーは初めて読みました!
まさに心温まるホラー、ホラーが苦手な方もぜひ読んでみてください!
前作『時雨の鏡』にて登場した不登校の女子高生、白銀林(リンリン)が主人公のファンタジーホラーです。
前作に登場した人物が出てきますが、お話は全く別物(続き物ではない)なので、前作を読んでいなくても十分に楽しめます。
作者さまが作品紹介で説明されている通り、ホラー要素は少なめで、ファンタジー要素が多い作品です。
そして本作では、様々な形の「愛」が描かれています。
家族を想う気持ち、友人を想う気持ち、生徒を想う気持ち、村人を想う気持ち……これらの「愛」が、鬼が出てくる悪夢のような恐ろしいホラーを、あたたかい幻想的なファンタジーへ変えてくれているのだと思います。
愛の力はすごいですね。
そして、「ポンヌフ」というとてもかわいいキャラクターが出てきます。
(何かは読んでのお楽しみ♪)
このポンヌフとリンリンの冒険は、「ピーターパン」や「不思議の国のアリス」を連想させます。
幼い子どもが冒険を通して成長する。
そんなテーマも感じられました。
ホラーは読んでみたいけど、残虐表現があるのはちょっと……という方にぜひおすすめです♪
読後は温かな気持ちになれます♪