白いレースのカーテンが、かすみ草の花束のように窓枠をふちどっている。

 出窓の向こうには、べに珊瑚さんごが、紅葉したかえでのような枝をのばしていた。

 子ども部屋の窓辺の高椅子には、ぬいぐるみの子グマがねむっている。


 木槿むくげは濃紺の更紗のワンピースに純白のレースのショールをまとっている。短めに切り揃えた前髪のあどけない面差しは、同じ歳になったりんよりも幼く見えた。


「ママとおねえちゃんは双子みたい」


 二人を見比べた林がつぶやいた。


「林は、よく間違えてたよね」


 笑った顔も、木槿と沙羅さらはそっくりだった。

 林が木槿の顔を思い出せなかった理由は、母と似ていたせいかも知れない。


 ――ねえ、わたしのメッセージ、わかった?


 木槿がイタズラっぽく瞳を輝かせた。


よいち姫でしょ。おねえちゃん?」


 林がうなずくと、木槿は満足そうな笑顔で拍手した。


 ――通じてた? さすがは親友だわ!


「でも、なんのことか全然わかんなかったよ」


 木槿が、がっくりと崩れてみせる。


 ――おねえちゃんと林が見ているのは、ただの悪い夢だって言いたかったのに。


「いまなら、よくわかるわ」


 沙羅が笑った。


「ねえ。宵待ち姫は、最後にご褒美をもらうんだよね?」


 林が母をふりかえる。


「そうよ。ご褒美はもらいました」


 母がまばゆく頬笑んだ。



 木槿が白いかいなをひろげた。


 夏の朝に、木槿の花が白く咲きほころんだようだった。



 ――林。おねえちゃん。お帰りなさい。


 沙羅と林と木槿は、ながく抱き合った。




   ただいま。

   あなたに会いたかった。

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