【季節ネタ】ハロウィンネタ②友人たちⅡ(男性陣)


「お前ら、朝っぱらから元気だな」


 昇降口に着けば、どうやら先に来ていたらしいアキトとジャスパーに遭遇する。


「というか、本当に自由だな。この国は」


 「一応、死者を送り迎えし、生者が冥界に連れていかれないために霊とかに扮するイベントだろう?」とジャスパーに言われ、「そうなの?」と不思議そうなノエルたちに対し、「よくご存知で」とキソラとアキトは内心思う。この面々の中では、きっと誰よりも『ハロウィン』というイベントに詳しいために、そんな反応にもなってしまう。


「とりあえず、二人にもお菓子をあげるよ」

「ん、ありがとうな」

「手作り、か?」


 キソラに差し出され、二人が礼を言いながら受け取る。


「まあね。駄目だったら返してくれれば良いから」

「いや、そういうわけではないんだがな。前に薬を盛られたことがあったから……」

「うん! そういうことは、早く言おうね? こっちも傷を抉るような真似はしたくないから!」


 もう過去の事とはいえ、王子相手によくもそんな挑戦者チャレンジャーが居たものである。

 キソラに強くそう言われたジャスパーは、顔を引きつらせながら、「わ、分かった」と頷いた。


「薬で思い出したが、今回は何が付与されてるんだ?」

「うん? 『状態異常封じ』だけど」

「そういえば、キソラのお菓子って、変な効果があったわよね」


 冷静になったらしいノエルがそう言えば、アリシアがぎょっとした顔を向ける。


「基本は状態異常にならないための魔法を付与してる。食べて毒とかに当たりたくないでしょ?」

「毒、麻痺、火傷、眠り、魅了……だっけか?」

「そうそう」


 状態異常の状態を上げたアキトに、キソラが頷く。


「食べる順番は問わないけど、先に食べておいた方が他の状態異常に掛かりにくくはなる」

「効果範囲は?」

「今日一日……って、言いたいところだけど、寝るまでだね。明日には普通の焼き菓子になっちゃうから」

「そうか」


 キソラから焼き菓子を貰った面々が、焼き菓子に目を向ける。


「ま、いつ必要になるか分からないから、貰っておくわ。ジスはどうする?」

「貰っておく。無いよりはマシだ」


 男二人の言葉にキソラは苦笑いするが、ユーキリーファがぽつりと言う。


「この後に渡すとか、実験してるみたいで嫌だなぁ」

「お前のも大丈夫じゃないか? この面々の中じゃ、キソラと並んで料理担当だろうが」

「……アキトが私の事をどう思っているのか、よく分かったよ」

「大丈夫だって、分かってもらえているだけマシだろ?」


 そんなやり取りしながらも、ユーキリーファから菓子を受け取っている辺り、ちゃっかりしている。


「でも、状態異常ねぇ。役員たちは大丈夫なのかしら。きっと、校内で一番貰うでしょ?」

「あー……」


 アリシアの言葉に、キソラは遠い目をする。

 去年はノークたちに渡すついでという名目で渡してはいたが、一応、今年の分も用意してはいるものの、どうするべきか。


「つか、向こうから来たりしてな」

「止めてくれない? そんなフラグを立てるの」


 苦笑を浮かべるアキトに、キソラが言うなとばかりに即座に返す。


「今年のキソラの焼き菓子は、状態異常を封じる薬だから」

「ユーファ!?」


 そういう効果があるから仕方ないが、お菓子であることには間違いない。


「得る手段が物々交換だがな」

「そういうイベントだからね!」


 さっきノエルをいじったからだろうか。今度は自分がいじられていることに内心不服ではあるものの、やられっぱなしは嫌なので、噛み付き返す。


「ほら、菓子じゃなくて悪いが、これやるから機嫌直せ」


 アキトから差し出された袋に首を傾げつつ、キソラは受け取る。


「後で開けろよ?」

「うん、分かった」

「アキト、そこは一人になったときに開けろとか言わないんだ」

「お前らが何を期待しているのか知らないが、中に入っているのは、お前らの期待に応えるようなものじゃないぞ?」

「えー」


 残念そうな声を出すノエルを余所に、キソラは袋の中を覗くが、中には長方形の白い箱のみ。


「ジャスパーは知ってるの?」

「ああ、色々と意見を求められたからな」

「じゃあ、後で何が入ってるのか教えてよ」

「エターナルが開けてからな」


 ユーキリーファの問いにジャスパーは答えるが、中身が知りたいらしいノエルが少しばかり押せば、苦笑しながらも彼はそう返す。


「じゃあ、キソラ。後で何が入ってたのか教えてよ?」

「それは中身次第だね。アキトのことだから、変なものは入れてないと思うけど」

「お前が何に喜んで、嫌がるのかなんて、今までの付き合いで分かってるからな。最悪、喜びはしなくても、嫌がるものは入れてない」


 それを聞いて、キソラは目を見開き、ノエルたちはニヤニヤと笑みを浮かべる。


「ま、まあ、楽しみにしておくよ」

「ああ、そうしとけ」


 そんな幼馴染二人のやり取りに、ノエルたちが顔を見合わせ、そっとその場を後にする。

 きっと後で、何で先に行ったのかを二人に問い詰められるだろうが、これはノエルたち友人らによるお返しだ。


「さて、後で返す言い訳を考えておかないとね」


 ノエルがそう言えば、「だねー」とユーキリーファから返ってくる。


「全く、あんたたちは本当にあの二人が好きよねぇ」

「否定はしないよ」

「私たち自慢の友人たちですから」


 アリシアが肩を竦めながら言えば、ノエルとユーキリーファが笑みを浮かべる。

 ずっと、ずっと、初等部の時から見てきていたのだ。

 あの二人のことなら、全て分かっているという訳ではないが、大体のことは分かっているつもりだ。


「それに――」

「それに?」

「類は友を呼ぶって、言うでしょ?」


 アリシアとジャスパーが不思議そうな顔をするが、ノエルとユーキリーファはこの事に関して何か言うこともなく、「それじゃあね」と言って、教室に入っていく。


「結局、どういうことだ?」

「さあ?」


 顔を見合わせ、そんな風に疑問に思いながら、二人も自分たちの教室に向かうのだった。

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