砂上の月、むき出しの青(全文公開中 ・試し読み版)

作者 河原 藍

59

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★★★ Excellent!!!

一言で言えば、特濃生小説。登場人物たちの微々たる感情の揺れ動きだけでなく、自分がそこにいると錯覚させるまでの鮮やかな場面描写。こんな偉そうな感想を述べてはいけないんじゃないかと思うほど才能を感じました。正直、いい歳いった大人たちの生々しい恋と実際の景色を超えた描写が織りなす「めっちゃ濃い生で出てきた魚香肉絲」みたいな作品。
若人より。

★★★ Excellent!!!

随分前に、何かの書評で骨太の小説という行があり、何だよ骨太って、思ったことがあります。
でもこの「砂上の月、むき出しの青」を読んだ時、その言葉が思い浮かびました。
題名も無茶苦茶良いですよね。読み終わってみると、この題名の重さと言うか良さがわかりました。

僕が考える小説の形としては、根底にあるモチーフを表現することが目的で、その表現のために登場人物を書き、描写を書き込む、心理描写はもちろん必要ですが情景描写はその心理描写にリアリティーを持たせるために、必要最小限でいいのでは、と思っていました。ところがこの小説は圧倒的な情報量でまず、度肝を抜き、その描写力で世界に引きずり込まれました。
胸ぐら捉まれ、こっちに来い。と言われているようでした。(笑)
そして今までの事、というエピソードで、イヤでもキャラクターたちは立ちまくりで、ともすれば記号化してしまいそうなキャラクターは生き生きと動き回り、感情移入しまくりでした。僕は小説の登場人物は記号でも構わないのでは、と思うときもありました。モチーフを表現するための記号、その考え方はかわってはいませんが。この小説はそんなちまちました考え方を押し流してしまうほどのパワーがあり。色々な意味で、稚拙な表現ですが、「目から鱗」でした。
これはどちらかというと、この作品は映像化されるべきと思います。二時間の映画では足らないので、最低5から7話くらいの連続で。
でもスケールが大きすぎるので、製作費がかかりすぎて、難しいかもしれませんが。
誰か作ってくれないかな・・・・・。
またこんな「骨太の作品」を期待してますいます。
素晴らしい作品を読ませていただきますいただき。
ありがとうございました。

★★★ Excellent!!!

初めまして。カクヨムにしては珍しく大人の小説で、楽しく読み進めています。個人的にコロナ前に自分も中国旅行行こうと思ってたのですが、これを読むと行った気になります。それぐらい細部までが書かれていて、旅情を感じます。あと主人公の香菜子って名前、中国人につっこまれるだろうな…笑

★★★ Excellent!!!

一気に読み進めて最後まで。素晴らしいの一言。
壮大なロードムービーのような、若い女性の人生の物語です。
「自分探し」という表現は上手くないかもしれませんが、ある意味「自分探し」の旅を広い広いアジアにて。
最初はNHKの紀行番組を辿る心持ちで読み始め、徐々に自分の胸に突き刺さる言葉がズキズキと並び、主人公が悟るシーンでは鼻がつんとしてきました。
行ったことのない場所、体験したことのない食事、肌で感じたことのない空気を、何も知らない私にも感じ入らせてくれた作品でした。
人生にはたくさんのつらい経験や残念な事柄がついてまわります。そんな一人ひとりの人生が山ほどある中で、たった一人の私を生きられるようになるために、主人公が走り続けてきた道を、これからも走り続ける道を、こんな風に長編小説として読ませてもらえるなんて感激です。
河原藍さんの作品は他にも読ませていただきましたが、この一作は大きな傑作なのだろうなと感じずにはいられません。
デリケートでありながら大胆な主人公。その人生の1ページを、あなたもぜひ。

★★★ Excellent!!!

この作者様の別作品『トランス』を先に読んでからこの作品を読み始めたわけですが、衝撃を受けました。
『トランス』読了後も似た感動を覚えましたが、またひと味違った読み応え。

素材の厳選された部位を使った一皿が『トランス』ならば、この作品は獲れたての獲物を姿焼きにして、したたる血をもろとも貪るような、野趣溢れる一品。
むき出しの情感、生のままの原風景を詰め込んだ、とてもエネルギッシュな作品で、読み手の心を揺さぶり続けます。

★★★ Excellent!!!

全100話を読み終えたとき、午前4時だった。
おそろしいほどの才能に出会ってしまった。その感動と物語の余韻が、眠りに落ちるまでわたしを包んでいた。

舞台は1988年、日本に恋人を残して北京に留学していた香菜子はさらにその奥を目指して旅をする。
「敦煌で会おう」そう言って恋人未満の男と別れ、大陸の風に吹かれにゆくが──。

思わぬ再会、約束の再会、望まぬ再会。そして新たな出会いと別れ。
本当に重いのはきっと、心の荷物。
闇も光も抱えた男女の機微や人間のドラマが繊細かつ鮮やかに描かれ、それらが読者の胸にねっとりと絡まり、叙情で包みこみ、高みへ引き上げては地面に突き落とす。香菜子の行動とその運命は、気持ちいいほどに読者の予想を裏切ってゆく。
中国料理のにおいや人物たちの汗のにおいまでが文章から立ちのぼり、むせ返るほど生々しい熱気と時代の風を連れてくる。

実体験を元にしなければ書けない物語ではあるが、事実をそのまま記した旅行記やエッセイではない。
ひとりひとりの人物たちに海溝のように深い物語があり、その個性が彩り鮮やかで、人間くさくて、悲しくて、おかしくて。
わたしもこんなふうに生きてみたい、旅してみたい、人と関わってみたい。気づけば香菜子の視点で世界を捉えている。読む前の自分にはきっともう、戻れない。

どれほどの密度でセンスと叡智と経験がつまった物語であるか、わたしの拙い言葉では言い表せない。
過不足のない表現、豊かで適切な言葉選び、巧みなレトリック。ちょっとした描写もすごくおしゃれで、台詞には押しつけがましくない程度の人生訓がこめられ、人物や世界への観察眼の鋭さは類を見ない。
表記にもこだわっていて、純文学でありながら、ルビが多いためかあえて一行空けも多用し、読みやすさも多分に考慮している。

あまりに圧倒的な才能と作品の完成度に、絶望する書き手も多かろう。わたしもその… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

旅行先の風景や食べ物がすっと頭に思い浮かぶ、読みやすい文章で描かれた物語です。映画みたいにお洒落な場面もあったりして、想像して楽しめました。
個人的には磨憨の市場の食堂で出てきた青菜と豚肉の炒め物の定食が好みです。ご飯がもち米なのが特に美味しそうでした。

主人公をとりまく恋愛模様はわりと複雑ですが、旅の情景が綺麗なのでするすると読めます。1998年という時代を背景にした政治描写も勉強になり、主人公の心理描写には時折はっとさせるものがありました。

長編ですがちょうどいいところで完結していますので、適度に長くてちゃんと終わりのあるものが読みたいときにいいんじゃないかなと思います。

★★★ Excellent!!!

なんとなく行き当たって読み始めたのだけど、まるで自分がその場所にいるかのようにトリップしながら一気に読んだ。中国へは何度も行ったことがあるけれど、目的が違うので観光地へは行っていない。しかし、この匂い立つような文章にワクワクさせられた。
そして女の業、作者の思いが端々に感じられて気持ちよかった。
読んでいて共感もしたし、もっと旅に出たくなった。
中国語に堪能な方なのだろうか。そのあたりも気になった。
読者が女性なら共感出来る部分も多いと思う。時代設定も絶妙だと思った。
思ったような最後ではなかったが、非常に気持ちよく読んだ。