第12話 少女は同級生を体内食堂に誘う。後編。

「あの~。何で絵里奈ちゃんの体内では、どうしてVIPが安心して食事できる場所として有名になったの?」


 俺は絵里奈ちゃんの体内食堂がどうしてVIPが安心して入れる場所なのか気にかかったので直紀さんにそれを聞こうとした。


「それ以前に君は誰?」


「そうか、忘れていた。俺の名前は箕面冬彦みのお ふゆひこ。絵里奈ちゃんの男友達だ。」


「ほう、君が絵里奈ちゃんの友達である箕面冬彦君か。」


「そうだ。」


 どうして、俺の名前を言っているのに俺を疑った目付きをしているんだよ。


「なら、僕の名前を言うね。」


 おっ、直紀さんの目付きが途端に優しくなったぞ。


「僕の名前は難波直紀なんば なおき。ロシア料理店『ノヴァ―ヤ』の店主だ。」


「こちらこそ、どうも。」


 俺は直紀さんの目付きが急に優しくなった事から彼がどうしてそこまで目付きが急に厳しかったのか、良く解ってきた。

 ここは確かに、絵里奈ちゃんの小腸の中だ。

 小腸といっても絵里奈ちゃんの栄養を担う小腸と体内葬たいないそうを受け渡す小腸の2つがある。

 栄養を担う方の小腸は普通の人間と大して変わりない。

 一方、体内葬を受け渡す側の小腸には体内レストランがあり、奥へ行くと人間に遺骨も多く眠っている。

 つまり、人間の遺骨が彼女達の小腸で眠っているから、彼女達は死と老いを奪われたんだと俺は思った。


「直紀さん。俺がロシア料理関連で手伝いできる事ってありますか?」


 俺は彼にロシア料理を手伝うことが何よりも大事だと思い、これから料理の手伝いをしようと思った。


「よし、貴様はビーツの水抜きだけして欲しい。」


「了解。ビーツの水抜きね。」


 俺はビーツの色がこんなに赤っぽい汁を出している事を考えると彼女の体内水道を利用して、ビーツの水抜きを行った。

**********

 それから、ロシア料理の手伝いを終えて…。


「よし、ビーツの水抜きを上手くやれたね。冬彦君。」


「ありがとうございます。直紀さん。」


「よし、VIPの食事も終わったようだし、これから君にここでロシア料理を作ってやろう。だから君はここで待っていると良いよ。」


「分かりました。直紀さん。」


 ロシア料理の手伝いを終えた俺は暫くここで待つ事にした。

 ********

「出来たぞ。」


「おぉ、それでこの料理はどんな料理だ。」


「これは鳥のミルクだ。白いかたまりをカスタードクリームで付けて食べる料理だ。どうぞお召し上がりな。」


「了解。」


 俺は直紀さんの言う通り、白い塊にカスタードクリームをつけて食事した。

 すると…、


「あぁ、何て鳥の卵から父が出てくるような美味しさなんだ。雌鶏が我が子を守るような安心さと従乳する様な柔らかさ。凄く、クセになるぞ。」


 俺はこの鳥のミルクには普通の鳥のミルクとは何かが違うと思い、直紀さんから聞こうとした。


「この鳥のミルクに何が入っているんだ?」


「従来のカスタードクリームの他に生クリームと和三盆糖が入っているからな。」


 道理で生クリームと鳥の白身が上手く混ざっている訳だ。

 俺はその生クリームと和三盆が入ったカスタードクリームを口に頬張り続けながら、その味を味わった。


 「どうだった。冬彦君。」


 「うん、凄く甘みととろみがあって又、食べたいデザートだと思ったよ。」


 「そうか、なら絵里奈ちゃんに内緒で又、ここで手伝えば良いよ。」


 「ありがとう。直紀さん。」


 俺は、ここで手伝いをすれば又、鳥のミルクが食べられると思い、料理の手伝いを又、したいと感じた。


********

 ―――クシュンッ!!


 あれ、何で私は席したのかな。

 でも、なんか、私のお腹の中で、何か賑わいがあるけど、大丈夫か。

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