2.ブルマ事件(後)
明くる日の朝。漢たちは校門に集った。握りしめたそのたくましい拳にブルマが握られていなければ、きっと彼らは三銃士そのものだったであろうに。
「さて…」
彼らは校門から少し行った場所にある公園へ向かった。大抵の生徒は通学路としてこの公園を通っている。彼らは茂みに身を潜めた。
彼らの作戦はこうだ。
1.荒井のブルマ(少し語弊があるが)を罠として置いておく
2.登校してくる生徒たちを待ち受ける
3.ブルマを握りしめた者を捕まえる
もはや番号順にする必要もないほどシンプルだがこれが彼らが考え得る最高の作戦であった。特にこだわったのはブルマを置く位置だった。
見えなそうで見える位置。あからさまな場所ではダメなのだ。基本的に道端にブルマが落ちていれば一般的に童貞は拾う。間違いなく嗜む。
彼らは吟味を重ね続け、ようやく見つけた。周りからはチラッと見える位置で、かつ霧島達が隠れる場所からはハッキリ見えるポジションを。
彼らは既に満身創痍だった。後は茂みで待機しながら公園からアホな笑い声が響き渡るのを待つだけである。
もちろん学校はサボる。
やがて生徒たちがポツポツと公園を通り始めた。霧島達に、ブルマにも気付かず登校していく。
しばらく経っても犯人は現れなかった。そのうち彼らは不安を感じ、一旦公園から目を離して相談し始めた。
「うーん。こねぇな」
「置く場所ダメでしたかね」
「かもな。でも今ここから飛び出してブルマなんて取れるかよ」
その時だった。
「おい!君たち何やってるんだ!」
そう呼びかけたのは霧島が最初に相談した生徒会長であった。額にはじんわりと汗が滲んでいて、妙に息が荒い。
「ゲッ!」
「ここで何してたかは、フゥ…、聞かないでやるよ。早く学校へ行け」
「ヘーイ、スミマセーン」
彼らは「チェッ」と舌打ちをして茂みから這い出て体に付いた砂を払った。
彼らは皆どこか違和感を感じた。しかし「もういいや」なんていう感情が先行し始めていた。
所詮僕らみたいな地味な透明人間じゃ何にもできやしないんだ、と。
公園の出口辺りに差し掛かった辺りで丸山がふと口を開いた。
「なんで会長は俺らの場所が分かったんだろ。道通る奴からは見えないのに」
「見えたとしたら…」
「見える場所っつったら」
「ブルマじゃね」
「ブルマですね」
「ブルマしかない」
ギャハハハハハハハハハハハ!!!!
突然笑い声が背後に響き渡った。
その後彼らが荒井のブルマを頭にかぶってYOSAKOIしてる生徒会長を捕えて学校に突き出したのは記すまでもないだろう。
こんなくだらないブルマ事件が、彼らが関わった最初の事件だった。
ボクらボンクラ 松井悲劇 @matsuhige
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