103.いざ、王宮へ
着替えを終えた僕はセバンティスさんと一緒に、元の部屋に戻った。
キラーリアさんとレイクさんはすでにその場にいる。
いつの間にやら、ピッケとルアレさんも一緒だ。
レイクさんが、なにやらピッケ達と相談中。
「……ということで、よろしくお願いします」
「いいよぉー。でも、父ちゃん達がどう判断するかは知らないけどねー」
うん? 何をお願いしたんだろう。
ともあれ。
「お待たせしました」
僕が言うと、レイクさん達がこちらを向く。
「なかなか似合っていますよ、パドくん」
「はい。ありがとうございます。洋服まで用意してもらって」
「気にすることはありません。私が子どもの頃来ていた普段着を仕立て直しただけですから」
そうだったんだ。
でも、それってつまり、侯爵様の子どもが着るような高級な布ってことで、やっぱり有り難いことだよね。
などと話していると、アル様とリラが着替えてやってきた。
「待たせたな」
アル様は赤を基調としたドレス。刺繍とか、いかにも最高品質といったかんじだ。
リラは青とピンクが混じったワンピースドレス。アル様のものほどではないが、やはり高級品だろう。
但し戦闘になる可能性があるからか、2人とも下半身はスカートではなくズボンだし、上半身も動きを阻害するほどの装飾はされていない。そして、ドレスには不釣り合いなことに、アル様は背にいつもの剣を背負っている。
「どうした、パド。ジッと見つめて」
「もしかして、私に惚れちゃった?」
アル様とリラが僕に言う。
「2人とも、カッコイイなぁって思って」
僕は素直に思ったままを言ったのだが。
2人の顔が引きつる。
そして、アル様が僕に近づき。
ゴガッ!
何も言わず、思いっきり僕の頭に拳骨を落としたのだった。
「な、何するんですか!?」
抗議する僕に、アル様とリラは口々に言う。
「うるさいっ!!」
「デリカシー不足!!」
――え、え、僕何か悪いこと言った!?
そんな僕の後ろから、レイクさんがポツリ。
「パドくん、ドレスを着た女性に対して『カッコイイ』は褒め言葉になりませんよ」
あ。
そりゃあそうだね。
「ゴメンナサイ」
ここは素直に謝っておこう。
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ともあれ。
僕ら5人は馬車に乗って王宮へと向かうことになった。
馬車の御者はセバンティスさんが務めているが、彼は王宮の入り口でお別れ。
一夜城壁を越えると、そこは全てが王城と呼ばれる場所。
といっても、一つの建物だけではない。いくつもの建物がある。
それら全てをあわせて王城なのだ。
かつて、レイクさん達がブシカ師匠に習った王国立大学がある建物もその中の一つだ。
そして、王城の中でも、王家の人々が暮らす場所が王宮である。
立派な建物が建ち並ぶ王城のなかでも、王宮はひときわ巨大で、煌びやかだ。
一夜城壁とは別に、王宮を囲む壁もあり、僕らは今、そこから王宮へと入ろうとしていた。
「それでは、アル殿下、レイク様、私はこれで。ご武運をお祈り致します」
僕らが馬車から降りるとセバンティスさんが一礼する。
「セバンティス、お前も道中気をつけろ」
「はい、ありがとうございます」
アル様の言葉に、再度礼をして、セバンティスさんは去って行った。
「さて。それでは行くぞ、お前達。ここからがいよいよ本当の勝負だ」
アル様はそう言って、不敵に笑ったのだった。
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