第133話 裏社会

 日の出屋は順調に業績を上げていた。


 東京の大きな病院が建て替えの為、弁当屋を探していると情報が入った。情報源は築地市場の卸の店だった。日の出屋は築地市場にもお弁当を提供していた。ここにおろしている女将さんに配送員が声をかけられたのが始まりだ。 


 工期は四年で、大手ゼネコンが入りピーク時は食堂もやる予定だそうだ。


 この仕事に裏社会の人が関わると後から聞いた。工事予定の商店街に事務所を抱え理事を務めている。お弁当のマージンを取りたいと考えていた。 


 東京のお弁当屋にはこの裏社会の方々と密に付き合っている会社もあると聞く。


 僕達も最初から知っていたら断っただろう。契約が決まってから裏社会の人たちが出て来たのだ。


 赤坂の会長に挨拶に来いと言われ、兄が一人で行った。配達を麻布の小鳥でやる事に決めた。


 年末にこの会社からパーティー券を買う様に催促の手紙が届いた。参加者名簿には芸能界からスポーツ界、政治家まで幅広い名が連なっていた。


 兄はお金だけ払いパーティーは不参加にした。


 僕は定期的に事務所に呼ばれ進行状況を報告した。


 年末の挨拶を歌舞伎町まで一人で行った時もある。事務所の中に入ると映画などで見るより迫力があった。やはり本物は違う。


 僕達は誠実に仕事に取組みマージンもキッチリ支払った。真摯に取り組む僕達は可愛がってもらった。


 僕達は、この仕事が終われば縁を断ち切る気でいた。だが引き受けた手前、最後までやり切らなければいけない。

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