第126話 寂しいアパート暮らし
僕は相変わらず風呂無しの安アパートに住んでいた。
日の出屋立ち退き後、一軒家を建てその家に親父たちと一緒に住む予定でいた。
飼っているクロも大きくなり、僕が留守の時は外に放し飼いをした。部屋にクロを残すと、荷物を滅茶苦茶にされたのがきっかけだった。
クーラーも無いので、夏場は不用心だが窓やドアは開けっ放しで寝た。家が完成するまでの我慢だと自分に言い聞かせた。
隣に老夫婦が住んでいて、クロに餌をあげ可愛がってくれた。僕が引っ越す時、クロは連れて行けないので老夫婦に話して引き取ってもらう約束をした。親父にクロの事を話すと猫は家を汚すから駄目だと言われていた。
精神病院は、二か月に一度の通院になっていた。僕の担当はユンと言う女の先生だ。生田病院に通院していたが、建て替えてホテルの様になっていた。通院でこの場所に来るたび、入院していた頃を思い出しトラウマになった。
アパート暮らしは寂しいモノだった。
夕食は近所のお店を渡り歩き、ほぼ全店制覇していた。
お気に入りの中華屋でトマト割りを飲み、くつろいでいるとお馴染みさんで賑わっていた。その内の一人が僕を指差し「俺はこの男を知っている。俺はこの男の人間性が好きだ。俺が女なら口説かれたい」
とにかく声がデカい。
僕は基本的に無口だ。黙ってトマト割りを飲んでいると、店は静まり返って微妙な空気が流れた。普通こんな時何て言い返すのだろうと考えながら飲んでいた。
このお馴染みさんはお会計を済ませ帰った。帰り際軽く会釈した。人との会話って難しいと思う。
軽口を叩き喧嘩になるなんてザラだ。
僕は幼い頃から日の出食堂で、嫌と言う程酒に酔い殴り合いの喧嘩を見て来た。
今日も、そういう経験が僕を無口にした。一緒に会話して騒げたらどんなに楽しいだろう。
これも精神障害の影響なのかなんて思いながら飲んでいた。
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