2-10
「ゲラール男爵とお呼びすればでよろしいかしら?御立ちになって。」
アリアは謝罪の言葉のあと、頭を下げ片膝をついた姿勢のままで待つマリシアスに声を掛けた。
「は、はい!だ、、男爵なんて柄じゃないですけど、、、」
「あ、あの、フィルデル公爵様の御令嬢アリア様とお見受けいたします。城中での勝手な振る舞い、また御無礼の件、大変失礼致しました。」
アリアから「お声」を掛けられた事で「赦され」と認識したマリシアスは、緊張から解放され息をつく。感謝の意を込めて重ねて謝罪を口した。
「!?」
だがマリシアスが立ち上がって面をあげ、正視した侯爵令嬢の表情は先ほど自分の頬を打った時よりも不機嫌そうだった。「赦された」訳では無いと気づいたマリシアスは、再び緊張した。
マリシアスが「正しく状況を理解している」と確認したアリアは、自身の興味と「確信への疑問」の裏付けを取るために言葉を続ける。
「ごきげんよう、ゲラール男爵様。当公爵家の娘、アリア・フィルデルに御座います。この度は父が主催する「宴」に御出席いただき、娘として感謝にたえません。」
アリアは両手でスカートの裾をつまみ、軽くスカートを持ち上げて足の膝を軽く曲げ背筋は伸ばしたまま挨拶をした。言葉遣いや作法は、格上の者から下に対して行うにはいささか可笑しな用法になっているが、そうする事でマリシアスを極度に威圧しないための配慮だった。
「ですが公爵家の者として、幾つかお伺いしなければならい事があります。よろしいですか?」
一旦言葉を切り、アリアはマリシアスの首肯を確認して続ける。
「当家の城に於いて無礼、不作法を働いた事は今、男爵には謝罪して頂きました。貴方様のお言葉と所作には誠意を感じました。私としては充分なのですが「公爵家」として、まだ「そうでは無い」事はお解りかと存じます。」
「当家では到着された賓客の皆様方に「宴」が始まるまでのお相手、城中ご案内をする者達が居るはずです。今、貴方様の御側にその者達の姿が見当たりませんが、どうなされたのでしょうか?」
そう、コレは城の中の決まり。そして「宴」のルールだ。支配者は自身が決めたルールに従わない者を快く思わない。特に「宴」の席とあってはなおさらだ。
アリアはマリシアスが非常に幸運だったと思う。
遠方からの列席だったから早目に城へ到着したのだろう、恐らく他の到着客は居ない。つまりこの事が両家。いや、まだ当事者レベルの問題で、外に漏れて風評にさらされる可能性はほぼ無いと言う事だ。
父の面目や対面に影響がなければ「極刑」は充分に回避できる。
さて、どうして「こうなった?」よね。
賓客のもてなしは主に
「
魔術と肉体能力の両面に優れ、デーム社会にあって支配者の序列にあり、領土に君臨する
まず彼女達。
だが完全では無い、容姿に関して言えば8割、よく似た親子のであり瓜二つと言う訳では無い。引き継ぐ経験に関しても2~3割のという所で、能力、記憶、経験。何がどう継承されるのかは親ですら解らない。
亜人社会に於いて「
治める「
だがその誉れ高い容姿、そして身に着けた能力、記憶、経験を全て引き継ぐのだと言う。
アリアはまだ目通りが叶った事は無いが、父と母は「卓の場」と呼ばれる集まりで面識が在るらしい。だが「
両親にここまで言わせる存在とは?アリアは恐れながらも興味を惹かれるが、詳細は謎のままだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます