第18話 女はそれを我慢できない
18-1.ズボラに磨きがかかった
四月に入るとフレッシャーズが世の中にはびこり始める。ジェネレーション戦争の第一段階があちこちの職場でスタートされるのだ。
大体勤務を始めて一週間程度で猫を被ることに疲れ慣れもあって彼らは調子に乗り始めるのだが、最近の風潮として装うことを知らない本音丸出しって子も多く見られて、私はそういうタイプの子はいっそ清々しいと思うのだが、絵美は気に入らないらしい。
デパート勤めの絵美の職場には毎年多数の新人女子社員が押し寄せる。若さに満ち溢れたうら若い女子たちだ。だから毎年この時期に職場の愚痴が爆発するのだ。
普段は仕事の愚痴などめったにこぼさないのに、やはり人間関係がストレスになるみたいだ。それもわかる。ましてや教える立場ともなれば様々に気を遣うし心を砕く。しかし教えを受ける方はそう思わないのが世の常だ。
ぷりぷり怒る絵美を私が適度に煽り、詩織がまあまあとなだめる。
絵美って女は、親しくさえなれば寛容さを発揮するが、そうでなければとことん相手を否定する。要するに人見知りなのだ。
わかっている私たちは存分に愚痴を吐き出させてあげる。それで気を晴らしてくれるなら安い物さ。
「ゴールデンウィークまでの辛抱だよ。ジュンヤくんと旅行行くんでしょ?」
「へえ? いいなあ。ご褒美が待ってんじゃん。いいなあ」
絵美は顔を和ませてへへっと笑う。ちきしょう、羨ましくなんかないぜ。
「紗紀子がここまでフリーでいるってのも初めてじゃない?」
「そうかあ?」
「紗紀ちゃん、落ち着いちゃったねえ」
ほよよんと詩織に言われたけど、落ち着いたっていうのかなあ、これ。ズボラに磨きがかかっただけな気がするのだが。
なんだか違う方向からハマってしまった静香に付き合い、あの後も三回お見合いパーティーに参加した。
回数を経るごとに攻略法が練れてきて、印象が良かった相手から連絡先を貰えたりした。
日を改めて食事に行ったりもしたけれどそれだけだった。
なんというか、ビビッとこない。なんか違うんだよな。一言で言うと食指が動かない。情動が起こらない。
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