10-4.教えなきゃわからない

「たとえばさ、樹里の彼はどんなふうに触ってくるの?」

「どんなふうって……」

「私はね、乱暴にされるのはあんまり。焦らすみたいにされるのが好きかなあ」

「あ、そういうこと」

 樹里はまた真っ赤になる。

「樹里はどっち?」

「わかりません」


「自分で触ってみればいいんだよ」

 自分の胸元に手を滑らせながら私は樹里を見上げる。樹里はびっくりした顔になった。

「感じる場所に、力の強さ。他人任せにするより自分で見つける方が早いと思わない?」

「で、でも……」

「そしたらお願いできるでしょう? ここにキスして。優しく触って。もっと強くって。きっと喜んでやってくれるよ」

「でも……」


「教えなきゃ男はわからない。言葉にするのが恥ずかしいなら、声を大きくしたりするのだっていい。それでも気づかないのもいるけどさ」

 体をずらして当たり所をよくしても、またわざわざ戻したりされると腹が立つ。そこじゃないって怒鳴ってやりたい。さすがにそこまではできないけどさ。


「中だってそうだよ。自分で指で触って確かめてみるといい」

「嫌です。怖い……っ」

 頬を引きつらせて樹里は言うけどさ。

「自分の体なのに自分がわかってなくてどうするのさ? それを他人に好き勝手に弄らせるの? それこそ怖くない?」

 樹里はまた泣きそうな顔になってこっちを見る。


「お風呂のときにでもさ、少しずつ挑戦してみなよ。研究する気持ちでさ。そしたらね、自分の体が愛おしくなるから」

 自分が女なんだってわかって、いろいろなことに諦めがつく。気持ちイイことは罪悪じゃなくて当たり前のことなんだって。


「大事なカラダを委ねるんだよ。好きじゃなきゃできないでしょ?」

「はい……」

「たくさん愛してもらって気持ち良くなれば、自然とやってあげられるようになるよ」

「そうですか?」

「うん。毎回求められても正直イヤだけどね」


 そこで少し気になって確認してみる。

「まさか彼氏はいきなりやれって言うの?」

「この前はそうでした」

 アホ。なんて情緒のない。

「それは私だって意地でも拒否する」

「そういうときにはどうすれば?」

「その気にさせてくれないとってかわすかなあ」

 そこは駆け引きだよね。意固地になったらそれこそ別れる別れないになってしまう。

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