57冊目 其れは執事にあらず

 どうも、吾輩です。

 執事。いいですね。

 ですがわれわれの想像する執事と本来の執事は大きく意味が異なるようです。

 真相を知っても、執事、愛せますか。


 漫画・アニメ等において執事と言えば、お嬢様あるいはお坊ちゃまの後ろに控えているのがお約束。多くは彼女や彼の親の代から使えており、なにくれとなく若い彼らの世話を焼いてくれる。「常に一緒にいる」ため最も信頼のおける相手であることも多く、作品によってはその信頼がいつしか恋愛感情に変わっていったりもする(※1)。


 だがそれは執事の仕事ではない。

 と、友人が言っていた。


 吾輩がロココ原理主義(※2)ならば彼女はヴィクトリア急進派とでもいったところか。とにかくヴィクトリア朝イギリスの、貴族制度や使用人の扱い等に大変詳しい。吾輩も嫁の登場作品(※3)の舞台がヴィクトリア朝イギリスであるので勉強すべきだなとは思っているのだが、そもそも使用人の描写されるシーンが少ないので、後回しにしがちである。


 彼女曰く、執事というのはそもそ屋敷の使用人を統括する立場の者であり、いくら嫡子や旦那様本人であろうとも、ビッタリくっついているのはおかしい! と。

 同時に……かは記憶にないが、執事がわらわら出てきて「執事長」が出てくるのは異常事態とも聞いた。 

 そうとも、執事はそれだけで総合職なのだ。いささか乱暴なたとえをするならば「社長」がわらわら出てきて「社長長」が出てくる展開……とでもしたらよいだろうか。

 主人にべったりくっついて世話を焼く係の使用人は別におり、女性なら侍女、男性なら従僕となる。

 吾輩は、この歴史的権威ある設定を前提として書けと言ってるわけではない。

 ないが、こういう趣味の人間もいるんだなと”認識”してくれると、いくらかうれしい。

 

 ヴィクトリア朝の彼女は、こんなエッセイに引っ張り出したことで怒っているかもしれないけれど、その時は謝ろう。ちょっとお高めの紅茶でも持って。


※1 いつしか恋愛感情に

 そもそも最初から恋愛感情だったり、原作ではそんな気配がなくても二次創作でそういう流れに持ち込んだりもする。


※2 ロココ原理主義

 45冊目 素晴らしきロココの世界 を参照。


※3 嫁の登場作品

 お察しの通り「吸血鬼ドラキュラ」である。

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