第85話 VS. 地岳巨竜アドヴェルーサ 6th.Stage
パキパキと薪が割れる音が、静かに響く。肌を撫でる夜風を感じながら、俺達は焚火を隣にぐるりと簡易テーブルを囲んで座っていた。
「こうして見ると、ホントただの山だな……」
月明かりを受けて照らし出されている、
イレギュラー続きだった
一応、体力が残っている俺とコトハで土山の上から何度か攻撃を試みたものの、アホほど分厚い土の層を崩して内側にいる
と言うか、切り崩した傍から直ぐに再生しちゃうんだよな、あの土山。つまり、再び
なので、早々に見切りをつけた俺達は野営の準備に入った。次からの行動を見据えて、
「どの位、ああしているつもりなんでしょうか……」
じっと
日中の戦闘で一番頑張り、損耗したのはこの二人だった。回復まで今しばらく時間が掛かるかとも思ったが、見ての通りしっかりと夕食を摂る事が出来るまでには復活した。
ラトリアに至っては、魔法を使った反動なのかとんでもない量の空の皿を作り出している。食欲が旺盛なのは良い事だが、まさか俺よりも多く食うとは思わなかった。
「分からん。アイツの回復力がどの位なのかなんて把握しようが無いからな……ただ、ああやって
「せやね。にしても……やっぱり、ああなった原因はラトリアはんの魔法が原因やろか」
「だと思うぜ。あの時、
俺は腕を組んで、当時の状況を思い出す。
ラトリアの魔力を吸収した
「分からないのは、その理由だよなぁ。あんだけガンガン周囲の魔力吸ってた癖に、何でラトリアの魔力一つ吸っただけであんなんになっちまったんだ?」
「そこですよね……」
うんうんと俺達が頭を捻っていると、ごくんとパンを飲み込んだラトリアがリーリエに問い掛けた。
「リーリエ……
「うん、そうだと思うよ」
「……たぶん、だけど。
ぽつぽつと語り出したラトリアに、俺達は一斉に耳を傾ける。
「みんなも、知ってる通り……ラトリアの魔力は、本来存在しえなかったもの。生き物の体に、最初から備わっているものじゃなくて……薬で後付けされた、
「……成程。だから、『お腹を壊した』か」
「ん……あくまで、予想だけど……ね」
ちらちらと俺達の顔色を伺いながら自分の考えを伝えたラトリアだが、正直かなりいい線を行っていると思う。
その重要な食事に、
「……ラトリアちゃんの考えは、理に適っています。多分、情報が少ない今の状態で出せるベストの答えだと、私は思います」
「うちもそう思うわ。“毒”いうのも、あながち比喩じゃあらへんのとちゃう?」
「だな」
俺達三人が納得したのを見て、ラトリアは恥ずかしそうにしながら顔を伏せる。その頭に手を置いて撫でながら、俺はある一つの推測を立てた。
「リーリエ。
「え? えぇ、そうですね。どれもこれも、迎撃を試みて失敗したというのと、
「だよな……とすると、だ。もしかすると、ラトリアは
俺はにやりと口角を上げて、未だ沈黙を続ける
「
「……ラトリアちゃんの魔力による影響を避けるためには、【
「なるほどなぁ。そう考えると確かにラトリアはんは、
「そゆこと。でもって、こっからが大事」
俺が口元を引き締め直すのを見て、自然とリーリエ達も姿勢を正す。ラトリアの頭から手を引いた俺は、腕を組んで話し始める。
「
はっきり言って、
しかし、今回ばかりは違う。偶然発見した事ではあるが、ラトリアと言う一人の少女が、無敵を誇った
「勿論、ラトリアにこれからやる第二、第三ラウンドの大部分を任せるなんて、負担が掛かり過ぎる事はしない。俺だって、
そこまで言って、俺は一旦言葉を切る。
ラトリアを
何故なら、恐らく既に
本当にそんな手を使うのかは分からないが、外殻の内側に強烈に圧縮した魔力を貯め込んでいるような奴だから、可能性はゼロでは無いだろう。そうなると、幾ら俺でも一〇〇%全員を守り切れるとは言えない。
だから、ラトリアにはリーリエと共に遠距離から様子を見つつ、俺とコトハが何とか作り出す隙を狙って貰う事になるだろうな。
「……がんばる」
それは、ラトリアにしては強い口調で紡がれた一言だった。非常にシンプルで短い宣言ではあったが、その四文字の中に込められた覚悟の重さは、聞き返さずとも感じ取る事が出来る。
「
リーリエの言葉に、俺達はこくりと頷き合う。そして皆一斉に簡易椅子から立ち上がると、手早くテーブルに乗った食器類の後片付けを始めた。
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