第4話 魔導士じゃない、魔法少女だァ!!

≪ミーティン≫へ帰還する道中。ラトリアを加えた俺達四人は、街道を行く馬車の中でゴトゴトと揺られていた。

 ストラトス号は緊急時にのみ使うって事で、俺とリーリエの間で講和条約が締結されたので、今回はお休みだ。でも偶に動かしてやらんと錆びちゃうからね、その時は俺一人で≪ミーティン≫の周りをグルグル走ってたりするけど。


「えっと……ラトリアちゃんは、魔法を使って今までドラゴンとか獣を撃退して来たんだよね?」

「うん……」


 俺が座っている対面では、リーリエとコトハの間にラトリアが座り、先程から質問を幾つか受けている。

 取り敢えず現状で分かってるのは、撤収前に聞いた魔法に関する事と名前、後は年齢が十五歳って事位か。うん、全然情報が少ないな。


「ほなら、スレイヤーではあらへんけど、立ち位置的には一応魔導士ウィザードって感じでええのかな?」

「違う」


 コトハが魔導士ウィザードと言った時、ラトリアは今までの口調とは打って変わって明確にそれを否定した。

 いやでもな、あんだけ派手な攻撃魔法使っといて魔導士ウィザードじゃないって言うのは説得力が……まさか、前衛職って訳でも無いだろうし。

 俺が腕を組んで思案していた時、ラトリアが胸を張ってとんでもない事を堂々と言い放った。



「ラトリアは、魔導士ウィザードじゃなくて――



 ……ん? 何だか凄く聞き慣れないけど、妙に懐かしい感覚を覚える単語が聞こえたな……聞き間違いかな?


「ラトリア、すまねぇがもう一度――」

「魔法少女」

「聞き間違えじゃ無かった!!」


 マジかよ、ラトリアは魔導士ウィザードじゃなくて魔法少女だったのか……いやいやいや! 何納得しかけてんだよ俺! この世界でんな職業聞いた事無いぞ!?


「ら、ラトリアちゃん? その、魔法少女って言うのは一体……」

「……! ちょっと、待って」


 混乱した様子のリーリエを見て、ラトリアは自分のアイテムポーチをごそごそと漁り始める。そうして取り出したのは……一冊の、本だった。

 それを、ラトリアは俺達三人に見える様に両手で持って表紙を前に突き出す。俺は、そこに書いてあった本のタイトルをそのまま音読してみた。


「『プリズム☆りりか 第一巻 ~魔法少女覚醒~』……えっ、もしかしてコレ漫画!?」

「そう……ラトリアの、人生の教科書バイブル

「ま、マジすか……読んでも?」

「ん、いいよ」


 ラトリアに許可を貰ったので、俺は驚愕と郷愁が入り混じった気持ちになりながら、パラパラとページを捲ってみた。

 やはり、中身は漫画だ……それも、所謂少女漫画と言われるジャンルだろうか。この世界の印刷技術は、機関紙や新聞が多数市場に出回る位には発達しているが、こう言った漫画の類は初めて見たな。

 内容としては、“主人公の女の子がある日めっちゃ強い魔法使い――魔法少女の力に目覚め、人々を襲う悪いドラゴンや悪人と戦っていく”っていうオーソドックスなストーリー仕立てになっている。


「……この主人公に憧れているから、魔導士ウィザードじゃなくて魔法少女か」

「うん」

「成程ねぇ……つかぬ事を聞くが、コレの作者ってもしかして≪皇之都スメラギノミヤコ≫出身だったりする?」

「……! よく、分かったね……」

「やっぱりな!」


 だと思ったよ! 古今東西、例え世界が変わろうとこの手の奴は大概東の国から生まれるって相場が決まってるからなぁ。

 俺はパタンと閉じた単行本をリーリエ達へと回して、ラトリアへ向き直る。その表情はあまり感情の起伏は見て取れない物の、俺を見つめ返す瞳は真剣その物だった。

 つまり、ラトリアは伊逹や酔狂で魔法少女と名乗っている訳では無いという事だ。本気で、あの漫画に出て来る主人公に憧れている……うん、まぁそれは別にいい。その対象が何であれ、これ程真剣になれると言うのは良い事だ。

 しかし……それならば、俺には聞いておかなければならない事がある。


「よし、ラトリアが魔導士ウィザードじゃなくて魔法少女だって言うのは分かった」

「「えっ!?」」

「……ぶい」


 俺がさらっと言った事にリーリエとコトハは驚愕の表情を作り、ラトリアはピースサインを作って勝利宣言をする。

 ……甘い、甘いぞラトリア。ここから先の俺の問いにどう答えるかによっては、魔法少女とは認められない可能性があるぞ!


「まぁ、その魔法少女への憧憬やら何やらもあって、をしてるってのも分かる……が、しかしだラトリアよ」

「……? なに?」

「えーっとだな……お前さんが使ってる魔導杖ワンドってさ……どう見ても、魔法少女って感じの生易しい物じゃないよね!?」


 そう言って、俺は馬車内のフレームにリーリエの魔導杖ワンドと一緒に立てかけてある、ラトリアが倒れていた場所から回収した彼女の魔導杖ワンドを指さす。

 それは、魔導杖ワンドと呼ぶには余りにも異質な形をしていた。形状はどう見てもでは無くだ。それも、腰だめに構えてぶっ放す様なデカいヤツ。

 長さはラトリアの身長タッパを悠に超え、ぶっちゃけコトハの身長と同じ位のリーチを誇る。一番ヤバいのは、その砲身とも見て取れる部分の形状だ。

 三本のレールを三角形になる様に組み合わせたそれは、手元付近のロ機構を見るに、通常状態と展開状態に切り替えられる仕様になっているのは明白。

 うん、こんな感じの兵器を俺はマンガかアニメで見た事ある……これ、レールガンちゃうんけ!?


「む……魔導杖ワンドじゃ、ない。これは、マジカルロッド」

「成程、電磁投射砲マジカルロッドか」

「……イントネーションが、おかしい」

「え? じゃあ魔磁火流炉弩マジカルロッド

「それも……何か違う……!」


 ぷくーっと頬を膨らまし、ラトリアが俺の顔を睨んでくる。ハッハッハ、そんな可愛く睨まれても滾るだけだ、全く怖くないぞ。


「まぁ冗談はさて置き……そのマジカル、ロッド? さっき見せて貰った漫画の中に出て来た主人公が使ってたヤツとは、大分違う形をしてるな」


 俺が見た主人公は、片手で持てるような可愛らしいデザインの杖を持っていたな。そこからブッパされる魔法は中々えげつない威力で描写されていたが。


「大事なのは、カタチじゃない……マジカルロッドと言い張る、勇気……!」

「えぇ……ま、まぁ取り敢えず、ラトリアが使ってるそれは魔導杖ワンドじゃなくてマジカルロッドなんだな?」

「うん……」


 うむ、全然納得はいかないが魔導杖ワンドって形でも無いから、もうこの際マジカルロッドでもええやろ。これ以上深く考えると脳が焼き切れそうだ。

 で、そのマジカルロッドを持ってるラトリアは魔法少女って事でファイナルアンサーだ。そして、それはそれとして俺はもう一つ言いたい事があった。


「しかし……見れば見る程、イカしたデザインしてんなぁマジカルロッド!」


 俺はまじまじと見詰めながら、率直な感想を漏らす。正直言って、滅茶苦茶好みのデザインだ!

 鈍色の武骨な砲身と言い、その造りと言い……ゴードンさんに作って貰ったマイ鎧を見た時に大喜びしていた俺からすると、もうむっちゃ琴線に触れる! マジカルロッドっぽいかどうかは兎も角として!


「……! 分か、る?」

「おう! あの三本のレールって、閉じたり開いたりする?」

「うん……魔法を使う時は、開く」

「やっぱりか。いいねぇ、浪漫あるねぇ! いや、俺が使ってる剣にも合体機構とかはあるんだけどさ……」

「……!? み、見たい……!!」

「おっ、いいぞ。次の経由地に止まったら、そん時に見せちゃる」

「やった……!」


 どうやら、ラトリアとは趣味が合いそうだ。魔法少女云々は、まぁ別に気にする程でも無いだろ。どう名乗るかなんて個人の自由、他人がとやかく言う必要無し!

 それより、ゴードンさん以外に俺の好みを理解してくれる同志が出来たって事が重要なのだ。これはもう、≪ミーティン≫に着いたら最大限手助けさせて貰うぜぇ!


 その時、テンションMAXの俺とラトリアに置いてけぼりを食らったリーリエとコトハは、ぽけーっとした顔で俺達を見詰めていたのだった。

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