Sランク冒険者㉒
レオンは小さく溜息を漏らす。そして、誰にも聞こえないよう小さな声で、「威厳を保つのも大変だな……」と、呟いていた。
フィーアの言葉に項垂れるレオンは、傍から見れば女房の尻に敷かれているようにしか見えない。これなら女性関係は問題なかろうと、クライツェルは胸を撫で下ろしていた。レオンが簡単に女に騙されては、他のSランクパーティーにとっても体裁がよくない。高位の冒険者は大したことがないと、他者に侮られても困るからだ。
「レオンの嫁さんがしっかり者でよかったよ。これならレオンが女に騙されることもないだろうからな。レオンは仮にもSランクパーティーのリーダーになるんだ。Sランクの名を貶める様なことはしないでくれよ」
「わ、分かっている。問題はない」
「だといいがな。ところでレオン、獣人を殲滅させたお前の騎乗魔獣を見せてくれないか?炎を操るサラマンダーなんだろ?出来れば炎を操るところも見たいんだが――別に問題はないだろ?」
レオンは、「あっ!」と、思わず声を漏らす。思えばサラマンダーを連れて来るのを忘れていたからだ。レオンは不自然に思われないよう、咄嗟に言い訳の言葉を並べていた。
「あぁ……、すまないクライツェル。サラマンダーは体調が悪くて屋敷で待機させている。ベルカナンには連れてきていないのだ」
「そうなのか……、なら仕方ないな。噂のサラマンダーと会えると思ったんだが……」
「そのうち会える機会もあるだろう。そう落ち込むな」
お茶を飲みながら二人の会話を聞いていたヴェゼルが徐に口を開いた。
「私としてはサラマンダーよりも、レオンの実力が気になるところですね」
「ん?私の実力など大したことはない。何せGランクの新人冒険者だからな」
そう言って笑みを浮かべるレオンであったが、一方ではクライツェルがヴェゼルの言葉にほくそ笑んでいた。
ヴェゼルの言葉は何時も使っている相手の実力を測るという合図でもある。ミハイルには止められていたが、クライツェルはヴェゼルを止めようとは思わなかった。何故ならクライツェル自身がレオンの実力に興味があるからだ。王都で広く知られている噂では、レオンはサラマンダーを偶々手懐けたとされているが、クライツェルはそうは思わなかった。手懐けられたのには何かしらの理由が存在するはずである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます