スキル②

 調査を命じて丸一日が経つ頃。

 アインスは数十枚の書類を持って再びレオンの部屋を訪れていた。

 レオンはその書類に目を通しながら、確認するように従者の管理画面を開く。

 書類と管理画面を幾度も見直し、間違いないと確信すると目を細めてほくそ笑む。


「そう言う事か……。スキルの効果が変わっている。いや、追加されていると言うべきだな」


 アインスはレオンの傍に佇み、嬉しそうなレオンの様子に頬を染めていた。

 そんなアインスに不意にレオンから質問が飛ぶ。


「アインス、痛覚無効のスキルはどういったものか知っているか?」


 不意に話しかけられ、ドキッとしたアインスであったが、レオンから笑みを向けられ更に喜びが込み上げてくる。

 本当なら今すぐにでも飛び跳ねて喜びたいところであるが、臣下としてみっともない姿を見せることはできない。

 そのため、アインスは冷静を装い普段と変わりない優しい笑みを浮かべる。


「存じ上げております。激痛や鈍痛と言ったバッドステータスを無効化する働きがございます」

「その通りだ。それらのバッドステータスはHPの自然回復を阻害し、一部のステータスを僅かに下げる。痛覚無効のスキルはそのバッドステータスを無効化することができる。しかし、どうやらこの世界ではそれだけではないようだぞ?」


 レオンの言葉にアインスは首を傾げた。


「と、仰いますと、他にもまだ何かあるのでしょうか?」


 アインスの知る知識の中ではその以外の効果はない。まだ何かあるのかとレオンの言葉に耳を傾けた。


「うむ。どうやらスキルの名の通り、本当に痛覚がなくなるようだ。従者の取得しているスキルを確認したが、痛みを感じないと言っている従者は、みな痛覚無効のスキルを取得している。これの重要なところは、装備品で痛覚無効のスキルを取得しても痛みを感じることにある。つまり、自身で取得したスキルでなければ痛みを感じてしまうという事だ」


 レオンは話し終えて再び書類に視線を落とした。

 アインスは感心したようにレオンを見つめ、少し気になっていたことを尋ねた。


「レオン様、もしや他のスキルも同じような効果があるのでしょうか?」

「それはまだ分からない。だが、調べる必要はある。アインス、もっと詳しくスキルに関して調査しろ。僅かな違和感も見逃すな」

「畏まりました。すぐに調査に取り掛かります」


 アインスはレオンに深々と頭を下げて部屋を後にした。

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