キエタノタメ

加賀崎ミナト

第一話 『最勇の友』

小さな逆流

一人は嫌だ。


彼女はそれをずっと聞いていた。

わしの願いと懇願を。


一人は嫌だ。


誰も信用できず、周りの目を気にして。

孤独に耐える毎日。


友達が欲しい、そう願う。

同時に、世界なんて滅んでしまえと、死ぬほど願う。


彼女は応える。

『覚悟』はあるのだな、と。







***







二学期に入ったし頑張らねば!そう意気込んわしは今日は少し早起きした。

いつものごとく誰もいないボロアパートの一角で、頑張って綺麗にしわを伸ばした制服に着替える。

鏡の前で寝ぐせだらけの髪と格闘しなきゃ。


「ん、んん…むぅ」


腰まで伸びた黒髪は、ヘアブラシを通すのにも苦労するのだ。

まったくもって鬱陶しいの。

JK女子高生の髪ではないなと苦笑いする。

女子高生らしからぬ小さな体で、背伸びして何とか鏡を覗き込んだ。

昨日含めここ数日はネトゲやらアニメやらを我慢して早寝した甲斐あってか少し血色がいい。

いつもの青白い肌と違い艶すらある。わしながら、こう見ると少し可愛いではないか。


「ま、この目のクマは……簡単には消えん…か。」


適当に支度し終えカバンを持つ。

ふと玄関前に立つと急に嫌になってきたぞい。

もし一学期と同じだったらどうしよう。

虐めはまだ続くのだろうか。

今日の昼食は何を買おうか。


購買での戦争を思い出すだけで憂鬱にな…あれ?恐らくだが論点がスライディング土下座して行った気がする。

兎にも角にもわしという圧倒的消極人間には余りにも生きづらい世界なのだ。

靴を履き、気だるげに扉を閉じる。

錆びた手すりと軋む階段、いつもと変わらぬ久しぶりの外界を肌で感じた。

眩しい日差しは引きこもりにはちとキツイ。


少し歩くと、白と紺色のセーラー服姿のJK数人が楽しそうにお話しながら歩いているのが見えた。

『国立ローゲン魔導高等学園』の制服、つまりいまわしが来ている服だな。

同じ高校に通う女子高生等を見て高揚…よりも不安が押し寄せる……。

国立ローゲン魔導高等学園は魔導適正さえあれば誰でも歓迎な進学校という、庶民的なのかエリート用なのかもよく分からない幅の広い魔導学校だ。

両親のサポートを全く受けられないわしにとって数少ない選択肢であり、わしには勿体無いくらい良い学校である。

最終学年でのLv5レベルファイブ率がなんと40%を超えるという、誰でも受け入れている割りに全体的な成長が結果として出ている。才能とは無縁のわしにはこれは嬉しい情報だ。




二学期。

今日は二学期初日なのだ。

わしにはずっと転機が必要だった。泥濘のような悪循環を打破するタイミング、勇気無きわしがどうにか『普通』の称号を手にする好機が。

今日こそはその好機にしなくてはならない。そう確信するのだ。

「あ!!」

しまった!思い出した!

あぁ~…もう家を出てから五分は歩いたぞ。

今になって思い出すとは………。

「不覚…まさか鍵をかけ忘れるとはな、このわしが」

嗚呼、そういえばこんなに大きな声を出したのはいつぶりだろうか。

そうである。

お察しの通り、わしは俗にいうボッチという生き物だ。


「はぁ~………これはない。」







***







国立ローゲン魔導高等学園




ホームルームはもう大詰めだぞ?

わしはまだ何も喋っていない。まるでアレだ。モアイだ。

誰か…誰かチャンスをくださぁぁぁい!

「では、唐突ですがぁ、転入生の紹介です。」


ざわ…

ざわ…

突然の転校生の登場にクラス中がざわめく。

扉から入ってきたのはわしの様に腰まで届きそうな桜色の髪の少女だった。まるでゲームの中から飛び出してきたかのように美しい彼女は、どう見てもわしとは別世界の住人だ。

案外異世界召喚されたのかもしれない。

「私はリズ・マーセルです。好きな四字熟語は鏡花水月です。よろしくお願いします!」

おぉ、と教室内が湧き上がる。

男子共はその可愛い転校生にテンションマックス。女子は女子で盛り上がる。わしは教室の隅で目を輝かせる。

言っている内容は兎も角、その雰囲気は可憐そのもの。

これは可愛い。


おやぁ?このわしの横にある空いた席は?

教室の最後列、一番左の窓際。

真横の席は空席…。

お前の次のセリフは『では空いてる席に座ってください』だッ!!

「ありがとうございますリズさん。では空いてる席に座ってくださいね、ハッ!」

教師の誘導に従いそのリズという麗しのJKはわしの横の席に座った。

近くで見るとさらにキラキラしてる、なんかキラキラした謎の粒子が漂ってるんだが?

しかしてこれはチャンスだ!

この娘とお話出来ればきっとわしの学園生活を変えられるかもしれん。

わ、わしの方から…間違ってもこの変な口調は出してはならん。

目のクマは大丈夫だろうか、気にならないだろうか…。

あれ、急に緊張してきたぞい。

絶対に失敗できない!


勇気をだすのだ!そう誓ったろう。

わしは…わしは………、友達が…。

「おはよー。わたしリズ、隣の席だね!よろしくね!」

「お、あ…わ、わし………………………うん。」

わしの世界は終わりを告げた。






つづけ。

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