おくることば

作者 奈月沙耶

23

12人が評価しました

★で称える

レビューを書く

Good!

 作者様の意図をこの作品から感じてはいけない。
 あくまで『いい夫婦』をいうものの価値観は、総ての読み手側にある。
 そして、他者の意見にも引きずられる。

 さて『いい夫婦』とは何か?
 「君を幸せにするよ」「私を幸せにしてね」「君の幸せが僕の幸せだよ」「貴女が笑ってくれるのが私の幸せ」
 これは、本当の幸せだろうか?

 一言お互いが、「一緒に幸せになろうね」と言えたのならば、きっと結末は変わっていたのかもしれない。

★★★ Excellent!!!

夫に尽くし続けた一人の女性が体を壊して死んだ。


これは妻を亡くした夫の独白だけで進行する物語。
亡くなった妻は、さぞかし彼にとって天使だったのであろう。彼の口からはこれでもかというほど妻への感謝の言葉が続く。
しかし彼がいつも肝心なことから逃げ続けていたのは独白の端々から知れる。あろうことか彼は、彼女の最期の時にすら逃げてその場にいなかった。

物語は夫の独白で幕を閉じる。罪悪感から目を背けるように、今さらながらの贖罪と愛の言葉をもって。
そして彼の言を信じるとすれば、妻は彼に尽くすだけの人生を「幸せ」に感じていた。

この物語が究極の愛情を表したものなのかそうでないのかの判断は、読者に任されている。全ては読んだ読者の思いしだい……。

たとえ作者さまの意図から外れているとしても、私はそう思わずにはいられない。

★★ Very Good!!

素直に読むと感動的な泣かせるお話です。

でも、ちょっと待てよ、と、ひねくれ者の私は思ってしまいます。

これはあくまでも夫の一人称で綴られた夫の側だけの話です。奥さんが本当のところどう思っていたのか、誰にも分かりません。

そう考えると、余りにも身勝手でエゴイスティックな男の独白とも取れます。

そして、さらに言えば、そういう男のダメさをすべて分かった上で、奥さんも、そして作者もこの男を優しく包み込もうとしているようにも感じます。

とてもシンプルなお話なのに、重層的な感情が織り込まれている、一筋縄ではいかない掌編だと感じました。

(深読みし過ぎだったらすみません……)