伊吹の出生の秘密(2)
「それは俺が呪われて生まれてきた男だからか?でも赤ん坊にはその血が半分は混ざっているんだぜ」
伊吹は薄茶色の鋭い瞳で一凛を見下ろした。
「伊吹は呪われてなんていない。伊吹のお姉さんは辛かったかも知れないけど、伊吹に罪はないじゃない」
そうだ。
きっかけは痛ましいものだったかも知れないが、生まれてきた子どもに罪はない。
ましてや呪われているなどと。
「俺の父親は外国国籍の強姦魔なんかじゃないんだよ、一凛」
伊吹はおもむろにポケットに手を突っ込んだ。
取り出したのは赤いペンだった。
「これは何色のペンだ?一凛」
一凛は伊吹の意図が読めず戸惑ったが、それでも「赤」と応える。
「どうして俺の目が色を区別できないんだと思う?どうして俺が遺伝子の研究をしているんだと思う?」
伊吹はペンのキャップを取ると自分の手の平に『血』と書き、一凛の目の前に突きつけた。
「俺の体に流れているのは本来混ざってはいけない血なんだ。子孫が途絶える運命の血、すなわち濃すぎる血縁」
開いた手を握りしめる。
「俺の父親は俺の親父だよ。俺は近親相姦で生まれた子どもなんだよ」
伊吹はますます強く手を握りしめる。
「初めてそれを見た時、俺はまだ小さな子どもだった。
俺だって何度も自分には罪はないんだと、もっと堂々としてればいいんだとそう言い聞かせた。
でもこの目が、世界を見るこの目が俺は呪われた存在なんだといつも訴えるんだ。
お前は人と違うんだ。
呪われた烙印を押された者なんだ。
目だけじゃない、分からないだけでもっと他に異常なところがあるかも知れない。
そしてそれは将来の俺の躰を蝕む恐ろしものかも知れない。
不安だった。
怖かった。
呪われた遺伝子が俺の知らない躰のどこかでうごめいて俺を殺す準備をしているかも知れないんだ。
それを自分で見つけたかった。
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