望まない結末(4)


 そしてどのチャンネルも一凛については何も言わない。


 それどころかハルを助けた人間の存在さえいないかのような話しぶりだった。


 警察はあのアパートを突き止めたのだ。


 一凛がハルの脱走に携わった証拠は充分に得ることができるはずなのに。


 一凛を逮捕するまで公にしないつもりなのか。


 寝室の外で物音が聞こえた。


 依吹が帰ってきたようだった。


「一凛起きてるか?入るぞ」


 依吹よりも早く扉を開けたのは一凛だった。


「ハルは?」


 依吹は一凛をそしてその肩越しに見えるテレビ画面に視線を向けまた一凛に戻す。


「依吹、今ハルはどこにいるの?依吹には警察から連絡が来てるでしょ。ハルは大丈夫なの?」


 依吹は目を細めた。


「ハルはうちの動物園にいる。大丈夫どこも怪我なんかしてないし元気にしてる」


 一凛は表情を弛ませた。


「ねえハルに会いたい、ハルに会わせて」


「今はまだ無理だ。もう少したってからじゃないと。それに」 


 ハルは以前いた檻よりももっと厳重に監視されているという。


 檻の鍵も限られた人しか持っていない。


「じゃあ急がないと。急いでイギリスに行かないと。そうだ依吹ネット使わせて、とりあえずメールを送らなきゃ」


「一凛、ハルは諦めろ」


 依吹の突然のその言葉に一凛は固まる。


「これ以上マスコミや世間を刺激するな。


 それにどんな理由でもハルが人を殺したという事実は変わらないんだ。


 いいか、理不尽な殺意で他者を殺すのは人間だけだ。


 それ意外の動物はすべて正当防衛だ。


 でも相手が人間だった場合、加害者の動物はすべて『排除されるべき危険な存在』そう烙印を押されるんだ。


 俺なんかよりも一凛が一番よく分かってることだろう」


「イギリスに行くこと、この前は依吹も賛成してくれたじゃない。それに真実は明らかにすべきよ」


「一凛とハルの関係もか?」


 依吹や冷ややかに言った。



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