第97話 開国という文化背景とジョン万次郎

開国という文化背景とジョン万次郎


ジョン万次郎は、その運命を自ら引き寄せた人物とされる。

決して、時代背景や、希有な偶然が、そうさせただけではない。

人間としての情と、熱意、勤勉さ、決断力と、その強い意志が、その列伝の大きな要因であろう。

その判断力は、アメリカの教育機関で養われたと観ることもできる。

江戸幕府から、明治への大きな変遷には、少なからず、中浜万次郎の視点も存在したともいわれる。


そして、アメリカ側の資料では、黒船から、開国へ導いた、大きな要因を鑑みることができる。

中浜万次郎が、42歳の時、明治新政府により、開成学校(現・東京大学)の教授に任命されたが、

当時、唯一の異国での高等教育機関(アメリカでの大学教育)受け、異文化を経験値と共に語れる人物であったであろう。

ただ、そのことを逆説的に考えると、異国に情報を放った、ともされ、敬意を表されることも少なくなったともいわれる。

その後、井伏鱒二の「ジョン万次郎漂流記」(1938年 直木賞)で、改めて、脚光を浴びた。


しかし、イメージと文化、1話にあるように

>>日本であることの本質は、技術を中心とした外来文化による変革であろう。

仏典・鉄砲・黒船・核爆弾・クラウド・・・・

その導入された技術には、技術を作り出した文化背景(思想)があり、

その思想さえも、技術レベルにおいて取り込んでいった。

日本人のイメージと意識

新しいものに本気度高く、問いかけて取り込みではなく、

また、従来の物事に死守することでもないだろう。

その本質的な理念は、すでに我々の心の底に定着しているからだ。


(註)中浜万次郎(ジョン万次郎 1827 - 1898)

9歳:父死去、10歳より、家族を支えるため、漁に出る。

14歳:遭難。数日の漂流の後、太平洋の孤島・鳥島に漂着。143日間の無人島生活の後、アメリカの捕鯨船ジョン・ホーランド号によって救助される。

この際には、ジョン・ホーランド号に見逃されてしましたが、島の裏側で停泊する船を予想し、下見の後、年上の仲間を連れて救助を求めた。

16歳:アメリカ本土に渡った万次郎は、ジョン・ホーランド号のホイットフィールド船長の養子となり、マサチューセッツ州フェアヘーブンで共に暮らす。

学校では、英語・数学・測量・航海術・造船技術などを学び、万次郎は首席になる。

19歳:卒業後は捕鯨船に乗り、給仕から、のちに一等航海士、副船長となり数年の航海を経た後日本に帰国することを決意する。

22歳:帰国資金を得るために万次郎は、ゴールドラッシュの起こっていたカリフォルニアへ。

23歳:金鉱で得た資金で上陸用ボートを購入し、ハワイの漂流仲間のもとへ。帰国準備を整える。

24歳:薩摩藩領の琉球に上陸。

26歳:幕府に招聘される。江戸で、直参旗本になり、中浜の姓を授かり、この時はじめて、中浜万次郎と名乗る。土佐の藩校「教授館」の教授。

30歳:軍艦教授所の教授。

33歳:日米修好通商条約の批准書交換のために幕府が派遣した海外使節団の一人として、咸臨丸に乗り込む。

37歳:薩摩藩開成所教授。

39歳:土佐藩主・山内容堂公の依頼により、藩校「開成館」の設立。

42歳:明治新政府により、開成学校(現・東京大学)の教授に任命。

そして、日米の架け橋に。

71歳:没

豊島区雑司ヶ谷霊園に眠る。

その墓跡は、図らずもアメリカの空襲で傷ついている。


(註)日本の目覚め - 中浜万次郎 - (アメリカの資料館での文章)

The Awakening of Japan

Nakahama Manjiro

A fourteen-year-old fisherman from southwest Shikoku became the first Japanese to set foot in the United States. After receiving an American education and discovering just how irrational and inhumane Japan's isolation appeared to the western world, John Manjiro's determined efforts to enlighten the Japanese about the West laid a foundation for Commodore Perry's successful visits to Japan in 1853 and 1854.

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