第101話 私とあなたとボーナスステージ(5)

 和己も満足できる豪勢な夕食を楽しんで部屋に帰る。


  扉を開けると部屋に布団が敷かれていた。

 2組、横に並べてである。

 敷居が無いどころか間すら開けてもいない。


 和己は急に頭痛を感じた。

 おいおいおいシステムは何を考えているのだ……


「うーん、和己の予約に1人追加と頼んだせいかな」

 そのせいかシステムの悪戯かは和己にはわからない。


「まあ和己なら問題は起こさないだろうし、大丈夫だよね」

 菜月はそう平気でのたまう。


「何なら部屋を変えて貰おうか。他にも開いてそうだし」


「ん、私は問題ないよ。和己も問題ないよね」

 そう言われてしまうともう終了だ。

 いいえとは和己には言えない。


「それにしても色々やって疲れたね。でもまあ結果的には満足かな」


「そうだな」

 和己の意識は既に半分位別の世界で戦っている。

 健全な男子高校生としての本能と理性とが、まあ仲間を総動員して戦闘中だ。

 しかも菜月は旅館の浴衣姿。

 布が薄いのとちらりと乱れ気味の場所から見える何かが和己の煩悩を刺激する。


「ごめん、今日ちょっと1日中動いていたから眠いし、電気消していい」

「ん、いいよ」


 菜月は電気を常夜灯にして布団の中に入る。


「それじゃ、お休み」


「お休み」

 和己も布団の中から応える。


 なお戦闘は相変わらず進行中だ。

 おいおい相手は菜月だぞとか、襲ってもどうせ勝てないだろうとか、色々考えても戦いは収まらない。


 しかも原因は隣で早くもすうすう寝息をたてている。

 困った事に寝顔が結構可愛い。


 いっそ自己処理してしまおうか、と最終手段まで和己は考える。

 でも同じ部屋で万が一処理中を見られたらもう人生オワタ感じだし、見られなくとも匂いが残るのは避けられない。


 勘弁してくれよ、と思いつつ和己は菜月の方を見る。

 悩みの原因は何も心配なくぐっすり眠っている模様だ。


 和己の報われない戦いは結局夜明け近く、空が白みだし鳥の声が聞こえ始める頃まで延々と続いたのだった……

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