第3章 レベル2

第23話 天才(紙一重)と調教師と一般人

 桜ヶ丘駅西口改札。

 土曜日なので人出はそれほどでも無い。


 8時55分着の各停と同時に駅に着いた遙香は、程なくして改札を出てくる菜月と和己を見つけた。


「ごめん、待った?」


 遙香は首を振る。


「この電車だろうと思ってちょうどに来た。それにしても……」


 遙香の視線は和己の方を見ている。


「何か文句があるか」

「休日なのに変わらないな、その格好」


 和己の服装は昨日と同じにしか見えない紺のポロシャツとチノパンだ。


「服を考えるのが面倒だからな。同じポロシャツを6枚持っている」

「こういう人だから、気にしないで」


「ジョブズ風のお洒落だ」

「はいはい」


 平常運転である。


「それでどっちに行く?」


「和己はどう思うんだ?」

「市民センター」


 和己はあっさり言い切る。


「何故か聞いていい?」

「暑いから近い方がいい」


 言い切るにはそれなりの理由があるのだろう。

 そう思っていた2人の視線が和己に突き刺さる。


「初心者用のイベントはこの2つしか表示されなかった。そして昨日言った以上の情報は無い。どっちが先がいいという情報が無い以上、近い方から回るのが合理的だろう」


「それを早く言って欲しい」

「無理無理、和己だし」


 遙香はため息をついた。


「あんた、よくこんなのと付き合っていられるな」

「慣れているからね」


 平然とそう言い切る菜月と知らん顔の和己。

 遙香はそれを見てもう1回ため息をつく。


「まあイベントの場所がわかるのも和己のおかげだしね。しょうがないか」


「そうだな、少しは感謝しろ」


「こういうのははいはいと言っておいてスルーするのが基本よ。あとたまに食べ物で懐柔するのも手かな。小遣い少なくていつも飢えているから」

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