○ そうめん
歴史研究家がランプやルールブックをためつすがめつしている時、大工が川の水を飲みに戻ってきた。
大工は歴史研究家を一目見ると、妙に高い声で叫んだ。「だ、誰だてめぇは!」
「こういう者よ」と、歴史研究家は大工に名刺を差し出した。
蓮太郎は名刺を貰っていない。誰何されなければ出さないらしい。
名刺は蛇腹状に折りたたまれたもので、広げると小さな文字がビッシリ書かれていた。自身のルーツが事細かに記されているのだろう。
大工は名刺を軽衫のポケットに突っ込むと、「俺は大工だ」と言って、プイッと顔を背けた。心なしか頬が紅い。
その時、黒塗りのお盆に乗って、ガラスの器に入っためんつゆ、薬味のわけぎ・みょうが・白ごま、それに竹の箸というセットが流れてきた。ご丁寧に三人分ある。
それから、全員が期待した通り、つやつやと輝くそうめんが流れてきた。
大工がぱあんと手を合わせ、「いただきます」と言った。蓮太郎と歴史研究家もそれに続いた。
三人は川岸に並び、天然の流しそうめんを堪能した。
ロバは草を食んでいた。
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