自動車化歩兵聯隊 共和国協定千四百四十四年冬至

 前線における自動車化歩兵聯隊はしばしば突出の危険に晒されつつも、機械化歩兵中隊の集中的な重機運用による敵陣地網の破壊と、戦車中隊の圧倒的という以外に表現が難しい強力な戦闘力によって窮地を脱し、リザール川周辺の共和国軍前哨陣地の放棄を支援し続けていた。

 戦線を押し上げるということができる程度には、共和国軍の戦力は帝国軍のそれを上回っていたが、その戦線を維持できるかといえば、それほどに余裕が有るわけでもなかったし、数で勝る帝国軍がぼんやりとそういった立てこもりを許しはしなかった。

 結局、幾つかの拠点陣地を前線に残して、遺棄された両軍の陣地を破壊しつつ、前線後方の連絡用の回廊地帯まで帝国軍が進出しないように、帝国軍前衛に穴を開け後方を脅かすこと、有力な遊撃戦力としての誇示が自動車聯隊の任務になっていた。

 基本的に戦闘そのものは任務としないが、転地転戦を続け友軍との連携が求められるややこしいな任務で、直接任務とはしないものの帝国軍の前線に穴を突くように移動し続けていれば戦闘そのものを避けることもできなかった。

 帝国軍を釣り上げるためにこれみよがしに行進をすることもあったから、様々な形で被害そのものは発生していたが、密度の高い自動車化率のせいか、兵員の死傷を始め損害は驚くほどに少なかった。

 馬車の性能を数倍にした貨物自動車による、兵員を含む物資輸送等の連絡線の維持をおこなう自動車装備率の高い部隊は、馬匹や人員の消耗を機械部品の消耗に置き換えることで、冬季の作戦でもそれなりの行動を維持することができた。

 自動車というものが、如何に兵站に過大な負担がかかるかということを示しつつ、一方でその負担に見合う威力を発揮して見せていた。

 これまでの常識で云えば、雨中などの悪天候下や冬季の行軍は兵に負担をかけるばかりで、組織的な公算の立つ作戦には成り得なかったし、そういった気象環境での行軍は中隊規模で配置された連絡参謀や、或いはすでに一部の部隊では組織だった運用が始まっている無線や電話電信などといった連絡通信手段があってもなお、小隊単位或いは悪くすると中隊単位で所在不明つまり事実上の全滅になることも多かった。

 そもそもに馬匹は冬の寒さには強いと云っても、生き物であるから働かせれば食い扶持は増えるし働いた分だけ休む必要もあった。冬場の戦場では兵隊よりもよほどこまめに面倒をみなければ馬匹はすぐに死んでしまう。

 六輪の貨物車はそれなりに手当をおこなえば、相当の積雪でも組織だった行軍がおこなえたし、既に数期にわたって積雪期を乗り切っていた広域兵站聯隊の自動車化輜重であれば、危険を把握しつつ限度をわきまえた冬季の補給をおこなうことは面倒事ではあっても不可能事ではなかった。

 荒天下での行動も同様だった。人員をまとめて自動車にのせるというそれだけの手当で人員の脱落防止にはなったし、連絡参謀の移動による戦死戦耗がわかるほどに減った。ともかく後方本部まではなんとか、その後も機材に余裕があれば軽自動車で配置されるまではなんとか、という様子で連絡参謀を移動させ生き延びさせためだけに必要としていた中隊本部の予備隊が、実際に予備隊としてつかえるようになった。天秤桶から水が溢れるような有様で行軍によって兵隊が脱落することが、まずは部隊指揮官としての悩みの種であったから、それが防げるということは喜ぶべきことだった。

 馬車でも同じことはできなかったかといえば、同じことはできたのだが、馬匹の糧秣の手当は兵隊の食事の世話よりよほど問題で、糧秣が切れたまま無理をさせれば馬は力をすぐに失い無理をさせればすぐに死ぬ。先回りの手当や荷の秣を増やすことで、馬車のほうが兵隊が歩くよりも一日あたりの行軍が短くなる、遅くなることが問題だった。

 奇妙な話だが、騎兵として動く馬は歩兵に比べて極めて早いが、ある一定以上の荷を預けた馬は急速に遅くなり、軍用行李や大砲を引く馬の歩みは、鍛えた兵隊よりもかなり遅い。

 馬が確実に人より早いのは、せいぜい三百パウンくらいの荷までで、それはつまり大柄な騎兵一人が武装をして、野営の支度を整えれば容易に超えてしまう重さでもある。或いは男女で二人乗りをする微笑ましい風景でさえ、長駆する馬にとっては相当に堪えているということだ。

 もちろん騎兵の軍馬はそういうことができる馬を選りすぐり鍛えているからこそ、軍場で兵を乗せて戦えるわけだが、選りすぐり鍛えた馬を揃えることの難しさから、騎兵は共和国に於いて急速に勢力を縮めている。

 聯隊以下の共和国の部隊が輜重を独自に持たないのも、中隊予備が輿で連絡参謀を運ぶのも、中隊輜重が行李一両或いはどんなに多くても四両止まりなのも、歩兵に大砲が多くの場合与えられていないことも、結局は馬匹の扱いの難しさによるものだった。

 もちろん機械も使えば事故も増えるわけだが、生き物としての馬を殺すことに比べれば、随分と気楽だったし、実際に扱いも楽だった。

 自動車の便利は圧倒的ではあったのだが、その圧倒的な能力を発揮させるにはそれなりの準備や心がけが必要であることは、便利の影に隠れて見落とされていた。

 すでにある程度の数が前線に送られていた自動車は、それぞれに威力を認める指揮官によって取り合いになっていたが、よくできた馬の要らない行李車という程度の認識だった。それは全く誤りというわけではないのだが、数倍の速さや数倍の荷物というものが突然の事故でおこす事柄の波及について理解したものはほとんどいなかった。

 手入れの悪い貨物自動車は、荒れた道で突然にあっさりと事故を起こした。

 それは帝国軍が残していった要害の一部がようやく威力を発揮したり、よそ見をしていた運転手が突然道がないことや立木に気がついたり、或いは泥や石をかんだ車輪が突然にもげたりということだった。

 そうやって自動車はすこしづつ失われていた。そして自動車が失われるとその行李数両分の荷を充てにしていた様々が立ちゆかなくなった。

 どのみち前線での車両整備なぞせいぜいが贅沢に湯水を使って洗うくらいのことしか出来はしない。それで壊れるならそれまでだったし、足回りだけちゃんと洗っていればだいたいそんなもので五年かそこらは大丈夫なように作られてはいた。

 もちろんそんな贅沢な世話を受けている自動車は少ない。例外は将軍の周りの本部の部隊くらいだ。

 共和国軍一般の話としては、行李はそれすらも手をかけていないものが多かった。

 壊れた行李は薪として或いは陣地の材料に使われたし、その程度の感覚で前線の誰もがいた。

 洗濯すら贅沢に感じるほどで、水と人手に余裕のある陣地は少ない。

 自動車化歩兵聯隊はそういった共和国軍の兵站実力の限界をジリジリと示し示されつつ、そういった様々な理由でしばしば足踏みをしている自動車運用をまた一歩踏み込んだものになっていた。

 自動車化歩兵聯隊。ラジコル大佐の新装備評価本部としての特務大隊とその隷下特務大隊は、現実として一般化した共和国軍の感覚とは全く別の、革新的な軍令本部直下組織として運営されていた。

 その戦力威力は単純に自動車化率や新鋭自動車の性能というよりは、自動車化を助けるだけの技術兵と各種事故からの救援可能な重器材を十分に揃えていたことが、自動車の機動力を低下させずに行動できた理由でもあった。

 これまでの共和国軍による自動車利用とは、運用態度そのものが全く異なっていた。

 目を引く戦車やその周辺機材に比べれば、運用していた重機の殆どは特に戦場での運用を考えていない、せいぜいが鉄の衝立を用意してあるくらいのものだったが、秋を乗り切ることには成功した。

 戦車に積まれていた発煙筒といったものでの目眩ましは、十分な数量が用意できない戦車の数を読みにくくするための場当たり的な演出装置であったが、その有用性が意識されれば燃やして煙を出すものを探すことは難しくなかった。

 ほとんどの部隊が現地で探さなければならず、或いは気の利いた兵隊が乾いた焚付を一束行李に積んでおくような中、車輌が必要とする燃料は、ちょっと拝借すれば焚付にはもちろん煮炊きや、更に贅沢をすれば兵隊の顔や手足を洗う盥の湯を作ることを許した。

 ほんのそれだけのことで兵隊は半日歩けるようになり、半日歩いた兵隊が一日命を延ばすことにもつながった。

 戦車の消耗品として付属していた発煙弾が、実は大口径の薬莢を備えた銃弾のようなものであると知れてからは、現地でありあわせの部材を組み合わせて発射機が作られた。一番成功したものは拳銃の先にカップ状のアダプターを付けてそのまま拳銃を撃つというものだった。機関小銃で同じことをやると、弾丸が焼夷剤を撒き散らしてしまい事故が起きるわけだが、前装式の回転弾倉拳銃弾であれば、威力もたかが知れていて玉突きのように薬莢を弾き飛ばしつつ、少し離れたところへ煙幕を展開できた。既に拳銃用に販売されている発炎弾黄玉を食卓に備える調味料の瓶ほどに拡大したもので、地上や水中に落ちてからもしばらく燃焼発煙している。

 強力な前衛によって敵が誘引され、後方への視界が遮断されることで、射撃が前衛戦車に集中することは後方で作業する工兵にとっては被害が減ることであったし、攻撃を引き受ける戦車にとっては大口径の臼砲による直撃以外の帝国軍の火砲は全て問題ないものだった。

 唯一の危険は履帯の損傷切断というものだったが、それは戦場の神に祈るべきもので軍人として心配するようなものではなかった。

 正面火力そのものは聯隊という規模或いは自動車化率を考えても決して高いものではない。砲火力は部隊全体でも十箇の歩兵中隊の迫撃砲と戦車中隊だけで聯隊独自の砲兵大隊はなかったから、戦車という特殊な装備を勘定に入れても数の上では標準的な歩兵聯隊に砲火力で負けるが、その他の様々な要素、部隊の展開速度や築城速度或いは敵陣地の無効化対応がひどく素早く、正面から帝国軍の抵抗攻撃を集め、そのことごとくを無視する圧倒的な威力の戦車の存在が戦力の運用を助けていた。

 ごく僅かな戦車の圧倒的な威力を目眩ましに、陣地の要衝を制圧することで自動車聯隊は陣地に穴を開ける時間を稼ぎ、重機類を運用する機械化歩兵が後続の車両や歩兵の進路を確保することで歩兵や砲の再配置の時間を与えないままに陣地に穴を開けていた。

 事実上の聯隊戦力の軸である自動車化歩兵大隊の人員とは別に、機械化歩兵大隊の人員は単に重機や自動車が運転操作できる兵隊、というわけではなかった。兵卒に至るまで読み書きに支障がない人員で構成されている部隊というものは、共和国軍では実は初めてだった。

 共和国軍における一般的な識字率として士官は学校もあり座学を経験しているから、読み書きに問題があるものはいない建前だったが例外もあり、兵卒に至っては概ね半数が自分の名前を書いたこともないという状態だった。

 部下を預かるようになると流石に下士官であっても名前くらいは読み書きできるようになるわけだが、それでも命令書に頻出する単語を追うのが関の山で、技術書学術書といった書籍を読みこなせるような者となると、それだけで部隊で一目置かれることになる。

 広範な活動機能を持つ重器材を運用するにあたって、速成に基礎教育だけを施され、文書化した資料を適宜読み込むという、これまでの兵隊では殆どありえない作業を求められていた事に理由があった。そのために実際と資料を現地で解釈し研究し、対策を講じる余地を産んだ。

 効率的といえる状況ではあまりないが、効率を求めるほどに必須要素が立件された状況でもなかった。

 作業としては効率的ではなかったし人員にも負担は多かったが、任務作業を通じ末端の兵隊たちは運用管理を主におこなう部隊幕僚たちよりも、よほど自分たちの部隊の画期性について認識していた。

 識字率がかろうじて過半を超えているに過ぎない共和国一般において、士官でもないのに文字が読める数字が扱える兵隊というものは、つまりはそれなり育ちの者が何らかの理由で軍に入り兵隊になるということで、彼らなりの前史があって兵隊になった者達である。

 思うところ考えるところが皆あり、新兵でもないのに訓練一年そろそろ現場も一年になろうかという時期であれば、部隊の意味するところの様々を彼らなりに把握を始めていた。

 機械化歩兵大隊の面々は彼らの任務の重要性とは別に、彼らがひどく敵味方から注目されやすい存在であることを認識していた。

 味方からは口笛を吹いてお手並み拝見、と扱われることが多かったし、敵からは目立つ大きな的と扱われていた。

 彼らの任務の重要性や存在の希少性を考えれば、快不快はさておきどちらも必然で、どうあっても任務を無事成功させる必要があった。

 わずか四両の戦車が大隊所属の中隊として扱われていることも、戦車の世話の労力を考えれば必然にも思えたし、馬のいない軽騎兵分隊という名の自転車による通信偵察部隊も機械化歩兵中隊の人員にとっては、時代の必然であるように感じられた。

 戦車中隊と機械化歩兵中隊の両方が同じ大隊に組み込まれていた理由は、人員や装備の数が揃わなかったからという、彼らが知ればがっかりするような理由であるわけだが、ともかく戦車や自転車という土木重機を戦場で扱う上で楯になったり小回りを利かせたりする幅広い機材があることは、運用が皆目見当もつかないありさまであった機械化歩兵中隊にとって大きな意味を持って受け止められ、全く縦横自在に自らの部隊の価値について模索する機会にもなっていた。

 戦線の膠着後、部隊は南北部隊をつなぐ軍用道路の整備に回されることになった。

 陣地を意識した位置の道路整備は人力でおこなうと荷駄の往来が困難で短期間に使えるものにすることも難しかったが、機械が短期間の支援をすることで道幅も出来も格段に変わった。

 問題は戦車中隊を常に取り上げようとしている聯隊本部と周辺部隊をどうにかして煙に巻かないと戦車の整備支援ができなくなることであった。

 ラジコル大佐は無能な人物ではなかったが、機械化歩兵中隊が戦車中隊の機動力を奪っていると考えていて、本部の予備に戦車中隊は組み込むべきだと考えていた。

 機械化歩兵大隊を預かる大隊長のマークス少佐の見解としては、そうあれば戦車中隊は極めて孤立した存在になり、一度戦況が劣勢に落ちいった後はあっさりと放棄せざるを得なくなる。

 現状の聯隊予備としての戦車中隊の能力にマークス少佐は疑問を抱いていた。

 戦車は全く強力な戦力ではあるのだが、使い捨てに出来ない戦力を予備として扱うことは危険でもあった。切り札は使い捨てにできるから切り札なのであって、そうして使うには高価で数が少なすぎる戦車は切り札たる資格に欠いていた。

 切り札としての戦車には文字通りの車輪の下と云う弱点があった。

 さらに唯一の打撃戦力である戦車を仮に失えば機械化歩兵中隊は、戦場での行動の自由をほとんど失うことになる。それはこれまでは乗員の戦死戦傷或いは重機が一時的な擱座をしても援護回収できた場面において、機材の放棄を判断することになる。

 戦車が陳腐化した後であれば、戦術判断を優先することは大きく価値があるが、現状の部隊創設にあたっての実験としての、実績作りとしての側面を考えれば極めて危険な考えだった。

 機械化歩兵大隊の中核である戦車中隊を失うことは、現在唯一の他に頼ることのできない状況において、事実上大隊の壊滅に繋がる判断だった。重器材回収の援護を歩兵部隊がおこなおうとすれば、文字通りの出血をいちいちおこなうことになる。

 戦車と同規模の大型重機は他に四両いるが、その履帯修理は機材があってもほぼ半日がかりであることを考えれば、重器材の支援なしに敵前での戦車などの重量級機材の回収は不可能だったし、機材があっても一旦擱座した戦車の回収は大事だった。

 戦車級の重量重機は戦車よりも地味ながら現状よほど活躍していた。

 そのうち二両は戦車回収用の牽引重機で、二両は巨大な腕を誇る多関節クレーンだった。

 牽引重機の方は装甲がなされている装軌トラクターで、牽引ウインチの駐鋤や作業面の踏み均しを目的にした排土板やジャッキにつかえる下顎のような腕と、機関整備や砲塔の交換などにつかえる吊上げ用の腕とを持った、ある意味で戦車よりも厳つい外見の車輌だった。

 どちらも事故対応や架橋陣地設営等で活躍していた。

 機械化歩兵大隊の装備の大部分は部隊の試験編成のための貸与品であり、予算が満了した軍の管理の品ではなくローゼンヘン工業或いはゲリエ氏個人の資産だった。

 軍の実戦試験に貸与した以上は壊れることまでは想定していたが、遺棄喪失した場合には実費でお買い上げいただくとした金額の総額は、ラジコル大佐の年俸を一万年にも渡って積んだとして払えるかどうかは怪しい金額だった。

 ラジコル大佐は数字の虚仮威しには当然に乗らない種類の人物で、あまり気にしてはいなかったが、そういう金額をマジンが示したということはラジコル大佐が無謀な指揮で機械化歩兵大隊を壊滅させた場合、マジンが然るべき措置を講ずることを軍に求めることは間違いなかった。

 大隊の人員は将来に新部隊を創設するにあたっての知見を蓄えた現場で嚮導的な立場に立つべき、新兵科員になる。一兵卒にしてもできれば一人も失わせずに新しい兵科の筋背骨としてこの後作られるだろう新設部隊の現場幹部下士官としたい。云わば苗にあたる人材とマークス少佐は考えていた。

 部隊指揮官マークス少佐として上官であるラジコル大佐への評価は、彼が軍で最も積極的に自走機械の運用価値を示していることも含め、極めて惜しい人物であると考えていたから、自分の大隊をラジコル大佐や或いは周辺諸部隊に解体させるわけにはいかなかった。

 ラジコル大佐はセラムとファラリエラがいることで、仮に部隊が壊滅しても二人が無事退役できれば問題ないくらいに考えている様子だったが、二人の女性士官の見解は全く逆で二人がいてなお部隊が壊滅するようなら、共和国軍に機械化部隊の運用能力なしとマジンは理解するだろうと想像していた。

 既に機械化歩兵大隊でも戦車中隊の整備については音を上げ始めていた。

 戦車中隊は一個戦車小隊四両と一個戦車整備小隊で編成されている一般的な中隊定数に欠けた部隊で、かっこよく華々しい戦車を専用の台車に載せたまましばらく行動をしていた。

 壊れているわけではない。壊れているわけではないが、すぐ壊れることから戦闘の想定されない地域では、半保管状態で運用されていた。

 専門機材を抱えた戦車整備小隊の他に整備小隊が各機械化工兵中隊と各大隊本部にそれぞれ一ついるにはいるのだが、陣地構築やら障害排除やらで中隊機材が音を上げると専属小隊だけでは到底手が足らず、本部の整備小隊が支援に入る。

 だが、戦車の整備状況によってはそれも難しいことになる。機械化歩兵大隊の部隊そのものの被害は極めて少なかったが、機材の疲労はこの一年でかなりのもので、後方ローゼンヘン工業でならば代品機材で手当をしつつ重整備という局面でも兵站補給の不全で応急対処のままという機材が増え始めていた。

 前線では車輌の洗浄を定期的におこなうことも難しかった。

 自動車化歩兵大隊の整備小隊には多少の余裕もあったが、そちらも悪路で脱輪や横転という事件があればひとかたならぬ騒ぎになるし、車輌の洗浄が満足におこなえない状況では整備どころではない。

 車輌の機構は既に数年の実績のある機構装置ではあったが、壊れない不調がないという性質のものではなかった。

 冬の寒さに凍った泥混じりの陣地は帝国軍の砲弾を弾き返す硬さに凍ることも多い。

 戦車も重機もいっぺんに音を上げればどちらかは救えないということになるのは想像の範囲だった。

 搬送用の自動車には余裕があるために機材放棄には至っていないものの、稼働不全の機材もちらほら出始めている。

 補給状況の悪化とともに事前から懸念されていた機械化歩兵大隊の装備の一部に機能不全の機材が現れ始めた、と云うマークス少佐の報告を受けてラジコル大佐は、罵声を僅かに漏らし取り繕った。

 ホイペット中佐があまりに冷静に大隊の走破した距離と破壊した塹壕の数と規模を口にして感想を述べたことで、それを総括するべきラジコル大佐が吐き出そうとした言葉があまりに無体に聞こえるのを避けたからでもあった。

 機械の体は飯と酒と煙草があれば生きていられる兵隊とは体の作りが違う、というわかっていたことをホイペット中佐は敢えて口にした。

 ラジコル大佐はホイペット中佐に余計なことを云うなと言わんばかりに一回目で睨みつけた。

 ラジコル大佐は沸騰した頭を一旦投げ棄てるように、口から湯気じみたため息を付いてから、セラムマークス少佐に向かって口を開いた。

「それで、少佐。貴官の配下の能力維持はいつまでなら可能だと考えるね。或いは回数でも距離でも構わん。我々の部隊にとって現場の意見が重要だというのはわかっている」

 ラジコル大佐は冷静に寛容に見えるように声の上ずりを抑えながら尋ねた。大佐自身が口にした言葉は彼自身我慢ならないことではあったが、部隊の状況を合理的に把握する必要について大佐自身が参謀研究として論述したことでもあった。

「全力発揮は一度か二度。発揮しないままということでも、春までには一旦後方に下がって最低限、湯水が自由に無制限に使えるところで落ち着いて整備点検をする必要があります。戦車も砲弾や燃料はありますが、部品に関しては届いていないものが増え始めました。距離に関しては走るだけなら数百リーグは。戦車に関しては百リーグほどで点検が必要ですので自走ということであれば、数十リーグに留めたいところです」

「我々もかなり道を整えたはずだが、広域兵站聯隊と言っても大したことはないな。……いや、我々が実験部隊であることを忘れがちだな。それで君の意見はどうするべきだということかね」

 ラジコル大佐は自分の口では言うのが嫌だというように結論を求めた。

「一旦どこかの拠点に帰るべきかと。距離で言えばアタンズということになりますか」

「なるほど。もうひと暴れしたいところだが、それは無理か。無謀かね」

 ラジコル大佐は自分でも想像がついていた結論に不満気に確認をする。

「それは無理とまではいえませんが、あまり余裕があるというわけではありません」

 ラジコル大佐はホイペット中佐に目を向けた。

「歩兵の食料弾薬は広域兵站聯隊の活躍によって補給は比較的潤沢です。また二箇の自動車化歩兵大隊の戦力はほぼ完全な状態です。ですが聯隊本部も含め整備小隊はどこも徹夜続きのようです。医者の不養生不摂生というやつは痛し痒しですが、機械化歩兵大隊に大きく負担がかかっているのもしかたのないところだと思います」

 ホイペット中佐は言葉柔らかなまま、問題点を纏めた。

 ラジコル大佐は過去に幾度か助けられている副官の言い様に両手を上げて自らの軽率を認めた。

「わかった。私の言いようが間違っていた。中佐の云うように部隊の戦果を考えれば、時代の魁として様々不明不足の中、部隊はよくやっている。広域兵站聯隊も我が部隊の機敏な動きによく付いて来て物資を届けてくれている。雪の中だというのに兵に凍傷は出ていない。彼らを責めるのはお門違いだった。それは認める。だが、……帰るなら帰るで一働きはしたい。同じ無事帰るのでも、最初にあれだけ華々しく様々に盛り上げておいて、あちこちの道路を整備したので疲れたから帰ります、では。こう。最初ばかり威勢がよくて息切れをしてというのはあまりに格好が悪い。ああ、なんというかだな。こう、敵中突破してリザール城塞を落とすのが無理だというのはもうわかっているが、両軍双方に心胆寒からしめて唸らせるようなことをしないと、長期の休暇を取ることは難しい。そのまま成果なしで実験終了部隊解散ということになれば目も当てられない。なにかこう、帝国軍の奴らを脅かせるような手頃な方法はないか」

 部隊長と参謀が集まる中で視線がしばらく盥回しになった。

 レンゾ大尉がしばらく地図を眺めて口を開いた。

「敵中を突破して帰る。というのは現在の戦力では不可能でしょうか。損耗の激しい機材や負傷者は別経路で後送その後合流という前提でよろしい、と思いますが」

「状況によるが、どういう経路と意図であるかによる」

 作戦参謀ダルゼン少佐が口を開いた。

「全力で敵戦線を突破後、そのまま移動し三号橋頭堡に向かうという経路意図です。途中での大規模な戦闘は企図しません。ただし車輌の燃料補給が必要ですので行軍そのものは数次の小休止が必要になります。この辺に近いのは二十四号橋頭堡ですのでそこから進発しておよそ八十リーグあまり九十リーグほどの距離を行軍します。基本的に行軍のみを目的とし有力な敵陣地に衝突した場合は迂回します。最後目的地である三号橋頭堡の陣地地帯では戦闘が必要になると思います。企図すべき戦闘は基本的には最初と最後、その二回だけです」

「作戦の目的は」

「特にありません。強いてあげれば、全員無事帰る、という点だけです。有力な敵陣地や敵兵力は可能な限り迂回することで戦力を温存しつつ、三号橋頭堡に相対している敵勢力を後方より突破し友軍に合流するという作戦経路を提案いたします」

 怪訝な顔でダルゼン少佐がファラリエラを眺めた。

「――その、そろそろ前線での疲れが機械に出ているということであれば、一刻も早く帰るべきです。ただ、いくら我々が実験的な独立部隊だからといって、疲れたから勝手に帰る、というのは通りが悪いので、敵後方を撹乱する威力偵察をおこなう、という体で敵中突破して友軍に合流するのはどうかと愚考いたします」

「理屈の上では可能だろうが」

 ダルゼン少佐がそう言って、口をしばし開いて閉じた。ラジコル大佐の目が少佐を見ていることに気がついたからだった。

「理屈の上で可能ならば、それを実地に可能にする案を整えるのが作戦参謀の役割だ。各大隊の再編成をおこなう。南北への要衝の整備は既に日数的には目処が立っているはずだな。その工事が終わり次第、敵中を経由して帰還する。消耗している一部機材及び負傷兵また突破困難或いは突破に不要と思われる機材については別経路で帰還させろ。古典的な部隊分進だ。経由地は二十四号橋頭堡と三号橋頭堡とするが、友軍との調整をおこなえ。彼らも戦果そのものはあったほうが冬越しが楽になるだろう。戦場は平野部とはいえ冬だ。兵の指を落とさせるような計画を建てるのは許さん。移動中の燃料糧食被服以外の装備定数は体力に余裕をもたせて設定しろ。別働隊の臨時指揮官はレンゾ大尉とする。三号橋頭堡は友軍支配下であるが激戦区でもある。先行してあたえられた人員装備で戦区概況を確認、陣地補強と本隊との合流に備えろ。負傷兵損耗機材についても別働隊に預ける。わかっていると思うが丁寧に扱え」

 ラジコル大佐の釣り針と呼ばれることになった作戦は元来この程度の思いつきとして始まった。

 それが直接的な友軍との調節の間に、リザール城塞を直接射程に納める恐怖砲撃の観測を目的とした作戦と変化したのはそれとして、そのために十日間の敵中残置を求められることになったのは聯隊にとって極めて危険だった。

 それでも全域で数万の兵を押し上げることは不可能でも針のように一部隊を押しこむくらいは容易かったし、それでリザール城塞に何らかの損害を与えられるなら安いものだ、と北部軍団のワージン将軍は考えたし、華々しい成果を求めていたラジコル大佐の気分にも合致していた。

 自動車化歩兵聯隊は補給管理の困難という重大な弱点はあったものの、戦力単位としては既に両軍を通じた東部戦線で最も強力なものだった。

 冬季の部隊の移動やそのための配置の確認を行うためには無線機や自動車がわずかばかり余計にあっても到底追いつかない。その現実が十日という日数になり、その日数が別の作戦へと繋がった。

 十分に地形の把握がない雪原で友軍から孤立する十日間は常識的な歩兵では死と隣り合わせだったが、作戦を承認した二人の上級指揮官は、いざとなればバーっと逃げ帰ってくればいい、くらいに気楽に考えていた。

 実際に自動車化歩兵聯隊の機動力の高さは、十分に消極的であればそれを許すだけの優速を持っていた。

 作戦の意味や価値について一旦は認めたラジコル大佐の気分としては敵と出会わず、ウロウロと敵中支配下地域を徘徊するだけという作戦行動は非常になんというか悶々としたものであった。

 しかし合理的な作戦判断として、派手に戦線を押し破った強力な部隊が後方地帯をたまに姿を見せるだけで身を潜めることの意味については当然に理解もしていて、それがなにを意味するのか。という点について当然に敵が考えることについて、重要拠点の守りを固めるために前線での活動往来が極端に減る、ということの効果についても理解していたし、実際に帝国軍と衝突することは殆どなかった。

 村々が見える位置を移動して見せてもその状況は殆ど変わらず、幾つかの空の防塁を潰して見せても後方へ連絡を走らせるだけの時間稼ぎのための小規模散発的な反撃があるばかりだった。

 そういう状態だったから多少の不安はあったものの、戦場で敵地に踏み込んだ以上は看過される種類のものであった。

 自転車と軽自動車で編成された軽騎兵小隊によるリザール城塞を遥かに眺められる位置までの進出と、そこまでの無線電信基地の設定、更に後方への連絡参謀による判定効果連絡はほぼ作戦定刻通りおこなわれた。

 軽騎兵小隊は視界を確保できる山地を上るにあたって最終的に軽自動車と機関銃を退路に一箇班をつけて残置させ、測量撮影機材と無線電信機を背負った特技班を伴ってシアール山の峰に観測拠点を設けた。

 迫撃砲よりもよほど武器らしく見える大口径の望遠レンズを装備した測量撮影機はリザール城塞尖塔からの峰の観測点までの距離が五万三千二百三十キュビットと示していた。

 当然共和国では初めての超超遠距離砲撃の観測であったし、砲弾そのものは更に後方およそ五十五リーグという砲撃を頼んだ手で糧食を口に運び咀嚼して茶を飲んでから測量に戻れるくらい時間がかかるものだったが、着弾予定時間を過ぎてもどこに落ちたのか、そもそも本当に撃ったのか落ちたのか音すら聞こえなかった。

 砲弾一発はつまるところ、馬車を丸焼きにするに足りるだけの軟膏状の焼夷剤と火薬の缶にすぎない。鉄砲以上に大きな音で爆発をする種類のものではなかったし、警笛や発煙などという気の利いた機能も付いてはいなかった。

 つまりは、目を皿のようにして落ちてくるだろう時間の何処かで新たに起きた火の手を探すしかないわけだが、五リーグあまりも先の何処かで馬車が一両燃えていたとして、それを探すのはなかなかに苦労があった。

 結局特技班だけでは弾着を観測できず、警護の分隊全員で手分けして炎を探すことになったが、リザール城塞からは随分離れた山地に火の手が上がっていた。

 計算上の散布界はおよそ一リーグと言われてはいたが、それを考えても遥かに外れたところに起きている野火は冬場の雪山にそうそう起きる種類のものではないはずだった。

 ともかく、それを起点に方位と距離を修正させていくしかないのだが、調整誘導しているはずの砲弾もフワフワとあちこちに動いていった。

 城塞への着弾を報告し砲撃を要請するまでに簡単な掩体を作っていても冬の山肌は寒く感じられるほどに風は強い。

 更に強いだろう上空の風向きやちょっとした些細な事柄で大きく砲弾がずれることは予想していたが、中にはどこを狙っているのかほんとうにわからないような、せめてこちらに落ちないで欲しいと願わずにいられない着弾をする砲弾もあった。

 なんとかリザール城塞に砲弾らしいナニカが吸い込まれ火の手が上がった途端に観測にあたっていた小隊全員が敵地であることを忘れ、芝居見物か何かであるように笑いどよめいた。

 散布界一リーグというある意味途方も無い触れ込みですらまだ生ぬるい程に本射効力射に移ってからも着弾は安定しなかった。だが同時に数十門で放っているらしく着弾そのものを探すことは容易くなっていた。

 夜を徹しての砲撃は観測する側からすれば全く観測の意味があるのかという種類のものだったが、時に上空の状態が切り替わるらしく、数リーグの幅でひどくふらつくこともあり慌てて修正を求めることもあった。

 観測にあたっていた軽騎兵小隊は全く意識していなかったが、彼らは帝国軍から既に捕捉されていて、位置取りから小隊の意図を読み取れなかった帝国軍は拠点の警備を厳としつつ、一日の距離の後方との連携をおこなっていた。砲撃の成果が不十分であれば小隊は殲滅されることになっていたはずだったが、初日の砲撃でリザール城塞が大混乱に陥り、前線の砦が発見した測地を目的とする斥候と思われる小規模な陣地については見過ごされることになった。

 ラジコル大佐の共同作戦の提案を最大限に活用した北方軍団によるリザール城塞に対する直接砲撃だったが、実を言えばワージン将軍以外はあまり実効的な効果を期待していなかった。

 戦争をおこなう上で、前線の部隊がリザール城塞に手をかけたという政治的な話題を無視することは全くできないという重要な意味もあったが、純軍事的には継続的な攻撃も後に続く攻勢も、もちろん占領制圧もおこなえない状態ではただの空威張りと変わるところはない。

 十数パウンの砲弾にどれほどのなにを期待してもたかが知れていることはわかった上で、百二十グレノルの砲弾をリザール城塞を狙って打ち込んだ成果に彼らはあまり期待をしていなかった。大した整備もしないままに用途と全く違う運用をされていた砲は知識の乏しいものでも分かるほどに疲れがみえていた。

 遠距離砲撃そのものもそうなのだが、全く純粋に共和国国内に向けた、もっと言えば大議会に向けた目に見える戦果、というものを求めた政治的なアピールパフォーマンスに過ぎない。

 北方軍団の幕僚たちはそう考えていたし、ラジコル大佐も当然にそう考えていた。

 だが直接観測していた軽騎兵小隊は別のことを当然に考えていたし、ワージン将軍も電波探信儀を使った遠距離砲撃の頃から考えていたことがあった。

 もっと別のことを考えた者たちも当然にいた。

 突然の攻撃に晒されたリザール城塞の帝国軍の将兵と臣民たちであった。

 後方から送られてきていた二十万の植民者民兵が場内での宿営をしているところに恐怖砲撃が降り注いだことで城塞そのものには大した被害を出さなかったが、帝国軍の戦争計画は大いに乱されることになった。巨大な城郭建物に被害が小さいと言っても二十万からの人々が火に包まれ右往左往したことでリザール城塞の機能は完全に破綻していた。共和国軍が小規模な攻勢ではなく大規模攻勢をかけられる余地があれば、間違いなく一気に城に手をかけられる好機であった。

 遠距離からの観測でもリザール城塞周辺に火の手が上がったことが遠目にもはっきりと分かったが、城郭に変化がなかったことで、焼夷弾攻撃では堅牢な城郭には損害を与えられないという判定に至ったことが原因でもあった。

 リザール城塞に対する焼夷弾攻撃は思わぬ形で大戦果となったが、共和国軍がそれを知るのは随分後のことになる。

 だが、少なくともこれまで全く手が届かなかったリザール城塞にこの冬始めて火の手が上がったことを見届けたものが出たことは共和国軍の士気に大きく影響を与え、敵中深く十日も孤立したまま、無事帰還した自動車化歩兵聯隊はその成果を称えられることになった。

 聯隊の作戦における走破距離は百五十リーグほどに伸び、リザール城塞から五リーグほどのところまで進出した斥候部隊もあった。

 常識的な砲誘導を考えれば城塞相手でもかなり遠いが、補給も通信連絡も充分でない敵地のことで常識というものの位置をどこに置くかという問題でもあったし、遠景でも何でもリザール城塞の火の手をこの目に収めて帰ってくるということは、戦争が始まってこの数年来の共和国軍の悲願でもあった。

 炎に照らされているリザール城塞の魁偉は明らかで、疲れているとはいえ共和国軍が戦争を諦めてはいないことを大議会で喧伝する材料となった。

 アタンズに帰り着いたとき一部重機類は置物同然の状態でもあったが、とりあえず敵中に分進した聯隊本体は戦死した戦友も含め全ての機材とともに味方に合流することに成功した。

 帝国軍は優速かつ消極的な敵の幻影に一冬振り回されることになった挙句に来季の攻勢どころではなくなっていた。

 帝国軍に安全地帯と呼ぶべき土地がなくなったことはすさまじい衝撃を与えた。

 それがどういう意味を持っているか、共和国で理解しているものは誰一人いなかったが、ともかくこの攻撃が一つの転換点だったのは間違いない。

 少なくとも帝国軍は今になって初めて、戦争をおこなっていることに気がついた、と言えるのかも知れない。

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