第38話 帰って来たおっさん
俺は帰って来た、妙なオマケを引き連れて。そして今、実家の前に居る。
エンドレス石器時代には許可が無いと入れないらしいので、許可を取らないといけない。
念話が届くのか試したのだが、うんともすんとも言わなかった。
「お豊、ちょっとここで待ってろ」
「こんな訳の分からない所に置いて行くのかい!」
「ここは俺が人間だった頃に住んでた実家だからな、すぐに戻ってくるし」
「本当に迎えに戻ってくるんだね?」
「本当だって、俺が帰りたい場所は他の神の管理下だから許可がいるんだよ、お前が入るためにな。だから、ちょっと行ってくる。大人しく待ってろよ、あまり移動するなよ」
そう言い残して、懐かしい先ぱいの世界へ跳んだ。
「ああああああ!帰ってきたぞー!」
両手を天に掲げガッツポーズ、感動で涙が出そうだ、出ないけど。急いで食堂へと向かう。
「リタちゃん、先ぱい居るかな~? いた」
壁をすり抜けると同時に尋ねたが、先ぱいは椅子に座って茶を飲んでいた。
「先ぱーい、幽霊を一匹連れて来たいんだけど、許可をくださいな」
「あなたどうしたの? 機嫌が良すぎるのでなくて?」
「やっと帰って来れて感動してるんだよ」
「さっき出て行ったばかりでしょう?」
「それがそうでもないんだ、もう本当に大変だったんだよ。じゃなくて、許可くれよ」
「幽霊ってどういうこと? まあいいわ、好きに連れてきなさい」
「詳しい話は後でするよ、迎えに行ってくるわ」
そのまま、実家前に跳んだ。もう失敗はしたくない、マジでもう一度繰り返すのはヤダ。
「おーいお豊、どこいったー? 迎えに来たぞ」
どこ行ったんだ、あのババア。少し飛び上がって周囲を眺める、いたいた。
「子供たち見てたのか? もういいだろ、いくぞ」
お豊は走り回っている近所の子供たちの側に居た。
「待ってたよ、早く行こうじゃないさ」
お豊の傍に降り立ち、直ぐに転移する。
「着いたぞ、懐かしの他人の屋敷だ」
「なんだい南蛮屋敷かい?」
あぁそうか鎖国してたんだっけか、こりゃ色々大変だな。
おかしいな、実家の前だってこいつの目からしたら、相当変わってるはずなんだけどな。
「とりあえず、屋敷の主人に紹介する。付いて来い」
扉をすり抜ける、あれ? 付いて来ない、様子見に戻った。
「お豊、体なんか無いんだからすり抜けろ」
再び扉をすり抜ける、今度は付いて来ている。
「ちょっと待ってろ」
俺の部屋のソフィーを呼びに行った。
「ソフィー、…ちょっと食堂へ来てくれ」
「旦那様、随分と早いお帰りですが用は済んだのですね。では、少し片付けをしたら向かいます」
ソフィーの顔を見たら本当に安心した。話したいこと訊きたいことがあるはずなのに、そういう言葉は何故か出てこなかった。
「わかった、頼むな」
壁を抜けて、廊下に戻り食堂へと再び向かう。
「お豊、ここだ。入るぞ、付いて来いよ」
お豊を連れて中に入る。
「紹介するよ。彼女はお豊、幽霊だと思う。勝手に付いて来た。
で、こっちの神様は…おっぱいの神様だ。奥に居るのは、この神様の従者でリタ」
成り行きで強引に付いて来たお豊を紹介した。リタちゃんが吹き出し、先ぱいに睨まれたが些細なことだ。
「名は豊、お豊と呼ばれておった。この神様に付いてきたのだ」
お豊は自己紹介をした。
「これはいらっしゃい。私はこの世界と屋敷の主人よ、名は伏せているのでごめんなさいね」
前は名が無いとか言ってなかったか?
「ご主人様、これは説明が必要なのではないのですか?」
「それは後回しでいいでしょう。とりあえず、ゆっくりして頂戴。ソフィーリアは呼んだの?」
主従が何やら相談しているが、よくわからんので放置しよう。
「ああ、声は掛けてきた、すぐに来るだろう。ウサオおいで」
ウサオは耳を動かしただけで、動こうとしなかった。
ソフィーが食堂へやってきた。
「あら?お待たせしてしまったかしらね」
「いや大丈夫だ、ソフィーこれが俺に付いて来た幽霊のお豊だ。
お豊、彼女は俺の従者のソフィーリアだ」
ソフィーとお豊にそれぞれを紹介する。
「旦那様、付いて来たというのは?」
ソフィーがなんかプルプルしてる拙い気がする。
「強引に付いてくると聞かなくてな」
「ふふ、誰かさんそっくりじゃないの」
先ぱいが茶化すが聞こえていないようだ、確かにソフィーの時と同じようなもんか。
「これが噂に聞く、修羅場というものですね」
リタちゃんが嫌な響きの言葉を放った。
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