―幕間―
Interlude3:At the pub―酒場にて―
「なーなー、あの
「まぁ、な」
商隊や旅人が宿泊する施設の近くにある酒場でカティーアたちは食事を取っていた。
よく煮込まれた鶏肉のスープを頬張りながらカティーアへ話しかけているのは中性的な美しさを持つ青年、シャンテだった。
シャンテの問いに、カティーアは手にしていたジョッキの酒を飲み干しながら眉を顰めて応える。
「そんな顔を露骨にしかめるくらい嫌な相手だったのかよ」
先ほどまで周りの商隊連中と談笑していたジェミトが、笑いながらカティーアの肩を叩く。
「…何度か災害級の魔物…そうだな…セーロスが変身した大蛇くらいの大きさの魔物のことだが…そいつを倒す仕事で一緒になったことが何度かあるんだが」
忌々しげに首を左右に振ってから肩を落とすカティーアに、ジェミトもシャンテも同情的な瞳を向ける。
「移動中も戦闘中も、とにかく俺が見える範囲にいる時は常に視線を感じてな…あのじとっとした視線がとにかく嫌で…」
「カティーアが話しかけるわけにはいかなかったんですか?」
ジュジがきょとんとした表情でそういった。
少しだけ表情を和らげたカティーアは、すぐ隣にいる彼女の頭を優しく撫でながら話を続ける。
「ああ、ジュジは知らないのか。俺は正体を隠さないといけないから、正装をしている間声を発することはほとんどない」
その話を聞いて、ジェミトがなにかを思い出したように膝をぽんと手で叩く。
「正体を隠すのは癖みたいなもんってことか。オレたちに会ったときも学者なんて言ってたしな」
「おれは素直だからそんな学者もいるんだなって信じてたんだぜ?あどけない子供を騙して胸はいたまねーのかよ」
ジェミトに続いてシャンテまでカティーアをからかうように笑う。
「…あどけない子供?どいつのことだ?ここの半妖精のことじゃないだろうな?」
鼻で自分の発言を笑い飛ばしながら、肩を竦めてみせるカティーアに対してシャンテはムキになったように立ち上がった。
「カティーアもシャンテも喧嘩腰にならないでください!」
ジュジの言葉でカティーアは肩を竦めて溜息を吐き、シャンテは新たな料理をカウンターにいるおかみさんに注文するために席を離れた。
「オレとしてはあんたみたいなやつがきてよかったと思ってるぜ?キラキラ-っとした貴族みたいなやつが来ていたら絶対にジュジを渡そうと思わなかったもんな」
「伊達に長生きはしてないさ。キラキラーっとした貴族の真似だって出来るぞ」
空になっているカティーアのジョッキに酒を注いだジェミトは、人懐っこく笑いながら、たくましい腕で彼の肩を叩く。
カティーアが、ジェミトとジュジにおどけて恭しいお辞儀をしてみせる。
予想以上の優雅な仕草に二人が驚いていると、席を立っていたシャンテが戻ってきた。
「そういえば
「とりあえず…ここから南西に向かって…この
カティーアが少し離れた壁に貼ってある地図を示してそう答える。
「イガーサさんの眠る土地…楽しみですね」
「明日にはこの街を出る。追っ手は来ないと思うが一応注意しておいてくれ。あー、あと、諸注意がある。ジェミトもシャンテも外はまだ不慣れだろう?」
新たに旅へ加わった二人に、カティーアが外での注意点や過ごし方を教え始める。
こうして、新たな仲間との夜は更けていった。
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