カーテンコールのその後に

作者 @dajinike

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★★★ Excellent!!!

諸王国連合兵団が千年かけても倒せなかった魔王を、召喚勇者が倒して元の世界に帰還。
平和になった世界では、兵団は役立たず・無用の長物として解体され。
最後の兵団長、ヘクトルは辺境の守備へと左遷された。

しかし、〝魔王〟という人類共通の敵を失った世界では、国家間のエゴが牙を剥く。
超国家的なかつての兵団へと向けられる、意図的に煽られた民衆の憎悪。
立場の弱い小国へと押し付けられた負債。
自国の利益を最大限に引き出すため、戦争を目論む大国。
――魔王を倒すことができなかった男は。
人間同士の悪意の応酬を、止めることができるのか?

先のレビュアーさんが、人間が「被害者の立場」を奪われた、と書いてらっしゃいますが。
まさにそうだと思いました。
絶対的な悪なしに、人類は、これからは自分の足で歴史を歩いていかねばならない。

素晴らしかったです。

★★★ Excellent!!!

 およそ宗教というものが「世の理不尽に対して自分を納得させるための方便」だとしたら、本作の魔王はまぎれもなく人々を救済する神の一変異種であったと思います。
 魔王が倒れ、勇者は去り、人々は己の弱さと卑劣さに自力で対処しなければならなくなった。魔王に虐げられる哀れな被害者ではなく、自らの中に悪がありうるということを突きつけられてしまった。
 本作は、魔王によって与えられていた「被害者の立場」というぬるま湯の救いを奪われ、どうにか自力で善き存在たろうと苦しみ血を流しながらあがく人間たちの姿が描かれている。
 ブッ倒せばそれですっきり大団円な悪役は登場しない。そんな時代はもう終わった。だが――弱く卑劣であってもなお、人はどちらかといえば善寄りの存在である。そう感じさせてくれる力のある物語でした。
 リアルな政治描写に支えられて、派手な戦闘描写が入っても地に足の着いたストーリーだったと思います。
 ごちそうさまでした。