#6 何見てるんですか先輩は

「それで、これからどうするんですか」

「うーん。どうしよう」

 珍しく、スグロ先輩は歯切れが悪い。

「どうしたんですか、先輩。最近ヘンですよ」

 リンコちゃんも私と同じことを感じていたみたいだ。

 スグロ先輩は、無言でコーヒーを飲んでいる。スグロ先輩と『シカゴ』に来たのは初めてだった。

「前もいったけど、今回は自信がない。きっかけぐらいは作ることができるかもしれない。ただし、そこから先はどう考えても見込み薄だ」

「依頼主はどんな子なんですか」

 私は試しに聞いてみた。

「普通の子だよ。一年生。卓球部所属。好きなタレントは中森明菜。趣味は切手収集」

 確かに普通だ。

「難しいのは、相手が私たちより年上だからですか」

「年上? ああ、そうか。いや、そうじゃない。それもあるけど。彼女、たぶん男がいる」

 先輩の生々しい表現に、私はぎくりとなった。

 リンコちゃんが身を乗り出した。

「先輩、あの人と久しぶりに会ったんですよね。どうしてわかったんですか」

「カウンターの裏に彼女のカバンが置いてあった。口が開いてたから、たまたま中身が目に入ったんだ。あれはお泊りセットだな」

 私が反応に困っていると、すかさずリンコちゃんが突っ込んだ。

「もう、何見てるんですか、先輩」

「だから、たまたま目に入ったんだよ。まあ、別に男がいてもおかしくはないよね」

 ふんふん、とリンコちゃんが頷いている。

「ちゃんと調べてから引き受けるべきだった。うかつだった」

「断っちゃいます?」

「いや。やれるだけやってみよう。それより、昨日お願いしたこと、くれぐれもよろしく頼む」

 リンコちゃんが口を開いた。

「二月十一日、先輩とイサミちゃんのデートを監視する」

「うーん、ちょっとニュアンスが違うような気がするけど……」

「大丈夫です」

 私は請け合った。先輩がもう少し詳しい話をしてくれないかと思ったけど、結局その日先輩はそれ以上何もいってはくれなかった。

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