#3 勇気の出ない二人には
「コボリくん――って、同じクラスの?」
ノリちゃんはうなずいた。
時間は少しさかのぼる。
リンコの先輩の話のあと、『シカゴ』で私たちはノリちゃんの意中の人の名前を聞いた。ノリちゃんの好きな子は、同じクラスのコボリくんだった。
コボリくんはどちらかというと目立たないタイプの子だ。パッとしない子、それくらいしか私の印象はない。もちろん好みは人それぞれだから、私がどうこういう筋合いはない。
「ふうん、ああいうおとなしい子がいいんだ。ちょっと意外」
もちろん世の中には他人の好みにどういういう人もいる。まあ、リンコがいうと嫌味にはならないからいいんだけど。
「さっさと告白しちゃえば? コボリくん、誰かと付き合っているようには見えないけど」
私も同感だ。
「たぶん無理。だって、コボリくん、好きな人がいるの」
「あらら。誰?」
「二年のサカイユウコっていう人。私とコボリくんは小中とずっと一緒で……。コボリくんは中学のときからユウコ先輩のことが好きだったの」
「コボリくんはユウコ先輩には告白してないんだ」
「うん」
私たちは押し黙った。
ユウコ先輩がどんな人か知らないけれど、ノリちゃんは結構可愛い。いや、かなり可愛い。女の子からみた可愛さと、男の子からみた可愛さは違う。でも、ノリちゃんの場合、男の子からみても断然可愛い部類だと思う。
「ノリちゃん可愛いから、いけるんじゃないの」
どうやらリンコも私と同じことを考えていたみたいだ。
「だめ」
ふるふると、ノリちゃんは首をふった。
「だって、コボリくん、三年間ずっとユウコ先輩のこと想い続けてきたんだもん」
別のいいかたをすると、三年間告白する勇気がなかったわけだ。そんな奴に、ノリちゃんの告白を断る気骨があるとは思えないけど、私は一応黙っていた。
「まあ、それはちょっとつらいかもね」
ここはリンコとは意見が違うみたいだ。
リンコは大きくうなずいて、腕を組んだ。
「よし。じゃあ、ひとつ『マスター』とやらに力を借りてみますか」
そして、このあと私たちはまた学校に戻って、西校舎の掲示板にノリちゃんの名前を書いた紙を残してきたのだ。
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