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 北川先生がサファイアのリングに視線を落とす。


「その指輪の彼なんだね?もしかして……俳優の矢吹貴さんかな?」


「……はい」


「……そっか、やっぱり彼なのか。ただの友人じゃないと、そう思ってた。仕方ないよね。彼は男から見てもカッコイイもんな」


「……北川先生」


「俺は本気で君に恋をしていた。だから、上原さんの幸せを心から願ってる。本当は、俺が幸せにしたかったけど。君の幸せは、君自身が決める事だから」


「……北川先生、ごめんなさい。私、病院を辞めた方がいいですね」


「どうして?」


「だって……」


「仕事と俺達のことは別だよ。付き合っていたといっても、友達以上恋人未満だったしね。上原さんは犬や猫ととても相性いいし、患者さんの家族の評判もいい。実は東京駅の近くに新しく開院するんだ。本当は二人でその病院へ移るつもりだったんだけど。俺は新しい病院に勤務するから、こちらは新しい先生に着任してもらう。だから上原さんは辞めなくてもいいんだよ」


「……でも」


「ここで働いて欲しい。君が世話すると、不思議と動物達が元気になるからね」


「ありがとうございます」


「じゃあ、そう言うことで。もうすぐみんなが出勤するから、仕事に戻って」


「……はい」


 北川先生は私に背を向けた。北川先生の背中に深々と頭を下げる。


 北川先生ごめんなさい。

 北川先生の優しさは、一生忘れません。


 北川先生を見送り、私は入院中の動物達の世話をする。


『優香、早いな。先生と内緒話してたのか?まさか!?先生と付き合ってんの?』


『うそ!?こんな色気のない女子を、大人の先生が相手にしねぇだろ?なんたって苺のパンツなんだから』


 相変わらず煩いな。

 いつも苺パンツじゃない。

 今日は林檎のパンツなんだからね。



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