147
北川先生がサファイアのリングに視線を落とす。
「その指輪の彼なんだね?もしかして……俳優の矢吹貴さんかな?」
「……はい」
「……そっか、やっぱり彼なのか。ただの友人じゃないと、そう思ってた。仕方ないよね。彼は男から見てもカッコイイもんな」
「……北川先生」
「俺は本気で君に恋をしていた。だから、上原さんの幸せを心から願ってる。本当は、俺が幸せにしたかったけど。君の幸せは、君自身が決める事だから」
「……北川先生、ごめんなさい。私、病院を辞めた方がいいですね」
「どうして?」
「だって……」
「仕事と俺達のことは別だよ。付き合っていたといっても、友達以上恋人未満だったしね。上原さんは犬や猫ととても相性いいし、患者さんの家族の評判もいい。実は東京駅の近くに新しく開院するんだ。本当は二人でその病院へ移るつもりだったんだけど。俺は新しい病院に勤務するから、こちらは新しい先生に着任してもらう。だから上原さんは辞めなくてもいいんだよ」
「……でも」
「ここで働いて欲しい。君が世話すると、不思議と動物達が元気になるからね」
「ありがとうございます」
「じゃあ、そう言うことで。もうすぐみんなが出勤するから、仕事に戻って」
「……はい」
北川先生は私に背を向けた。北川先生の背中に深々と頭を下げる。
北川先生ごめんなさい。
北川先生の優しさは、一生忘れません。
北川先生を見送り、私は入院中の動物達の世話をする。
『優香、早いな。先生と内緒話してたのか?まさか!?先生と付き合ってんの?』
『うそ!?こんな色気のない女子を、大人の先生が相手にしねぇだろ?なんたって苺のパンツなんだから』
相変わらず煩いな。
いつも苺パンツじゃない。
今日は林檎のパンツなんだからね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます