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おでん屋!?
キャラが違うよね?
北川先生なら、高級フレンチとかイタリアンとか、そんなイメージだったから。
「行こう」
「……はい」
タクシーに乗り、私達は北川先生の行きつけのおでん屋に向かった。
赤い暖簾は変色し、長年ここで開店していることが見てとれる。店は小さくてカウンターしかなくて、全然お洒落な雰囲気ではなかったけれど、店内はすでに満席だった。
「へいらっしゃい!先生、珍しいねぇ。可愛い女の子連れちゃって」
店主が威勢のいい声で話し掛けた。
「やだな親父さん、今夜は満席だね」
「今すぐ空けるよ、任せて。先生の為なら、即、空けちゃう。お〜い!母ちゃん、一番奥に席二つ用意して」
店主はカウンター席の客に無理矢理詰めてもらい、私達は一番奥に並んで座った。
「一度この店のおでんを食べたら、他のおでんは食べれない。大根もコンニャクも玉子もちくわも全部うまい」
北川先生は大好物を前に、頬を緩ませた。
「いい匂いですね。美味しそう」
「好きなものどんどん頼んで。ビールにする?日本酒にする?」
「北川先生と同じもので……」
「じゃあ、親父さん、熱燗とおでんはおまかせするよ」
「あいよっ!じゃんじゃん出すからね。お嬢さん、たくさん食べてね」
「……はい」
私は熱々のおでんを食べながら、北川先生と色んな話をしたんだ。
北川先生は仕事の話は全然しなかった。
ライブの話や趣味の話。サーフィンや登山、スキー、釣り。北川先生はインテリだと思っていたけど、多趣味でスポーツマンだった。
話をしていると、八歳も年上だなんて思えないくらい楽しくて面白くて。
でも時折見せる顔は、やっぱりオトナで……。
矢吹君のことを考えながらも、家族と一緒にいるみたいに、何故か心が穏やかになれた。
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