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「私、この二匹苦手なのよ。全然懐かないし凶暴なんだから。こんなだから飼い主に捨てられるのよ」
「……捨てられたのかな?」
「捨てられたに決まってるわ。首輪付けてないもの。そういえば、優香ちゃんネックレスしてるでしょう。この動物病院アクセサリーは禁止だから、私も仕事中はピアスを外しているのよ。婦長に見つかったら没収されるわ。外した方がいいよ」
「……そうですよね」
さっき突然光ったんだ。
何かのはずみで点灯するような仕組みなのかな?
クリスマスツリーの電飾じゃないんだから、そんなわけないよね。
「藤崎先輩、少しだけ動物達を見ててもらえますか?ネックレスをロッカールームに置いてきます」
「わかったわ。苦手だけど、この二匹フェンスに戻しておくわね」
私は藤崎先輩を入院室に残し、ロッカールームに急ぐ。ネックレスを外し、サファイアを手に取る。
サファイアはいつもと変わらない青藍色をしている。当然のことながら、光るような仕組みはない。
不思議な気持ちを抱いたまま、バッグの中にサファイアのリングを収めロッカールームを出た。
二階の窓の外で、何かが動いた。
ここは二階だ。人が歩いているはずはない。
カラスかな?
気にも止めず入院室に戻る。
入院室の照明は消されていた。
「……あれ?藤崎先輩もう一階に降りたのかな?」
ヨークシャーテリアのケージの中で、テリーが倒れていた。
「……テリー?テリー!?」
テリーの首に指をあて脈を確かめる。
テリーはちゃんと呼吸をしている。
どうやら気を失っているようだ。
一体……何があったの……!?
背後で殺気を感じた。
鋭い視線がこちらに向けられている。
恐怖から、後退りした。
ナースサンダルにコツンと何かがあたる。足元に視線を落とす。
そこには……
藤崎先輩が倒れていた。
「藤崎先輩!藤崎先輩!」
しゃがみ込み、藤崎先輩の体を揺する。
「静かにしろ!」
後頭部にヒンヤリとしたものがあたる。
それが銃口だと気付くのに、数秒間を要した。
――強盗!?
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