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「……あっ、はい」
私は彼女の迫力に圧倒され、あやふやな返事をする。
彼女は振り向き、病室に視線を向けた。
「恵太!愛しの優香ちゃんやでぇ!」
愛しの優香ちゃん!?
この人……だれ!?
病室を覗き込むように視線を向けると、ベッドに横になっていた恵太と視線が重なり、照れ臭そうに笑った。
そして、隣に立っていた矢吹君に視線を向け奇声を発した。
「あ゛ーっ!や、や、矢吹!?」
「よっ、中原。暴漢に襲われた傷は大丈夫か?久しぶりだな」
「……お前、よくもヌケヌケと……」
矢継ぎ早に問い掛ける矢吹君を、恵太は睨み付けている。いや、固まっていると言った方が正しい。
その険悪な雰囲気を察してか、彼女がせっつくように恵太に声を掛けた。
「なぁ恵太、うちのこと、はよ紹介してんか」
「へっ……?」
矢吹君を見て固まっている恵太に、彼女が甘えるように流し目をした。恵太は、まるで蛇に睨まれた蛙だ。
そのただならぬ雰囲気に、私は矢吹君と顔を見合わせた。
「わかってるって。ごほん、んっと……彼女は浪速警察署地域課の城田美咲さん、俺と同じ警察官なんだ」
恵太はすでにしどろもどろだ。
額には薄らと汗が滲んでいる。
「なんやそれ?うちら、ただの同僚やないやろ。うちのこと『好きや』言うたやんか」
「……ぐっ」
恵太は苦虫をかみつぶしたような、渋い顔をしている。
彼女はそんな恵太に、お構い無しに言葉を続けた。
「うちな、恵太の恋人やねん。よろしくね。優香ちゃんのことは、恵太から話しを聞いてるで。仲ようしてな」
「はっ……?恋人?」
「えっ……?恋人?」
私と矢吹君は同時に声を上げた。
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